打越さく良先生の法律相談 連載第3回 障がいを理由にタクシー乗車拒否されたら?

【第3回】タクシー会社は「乗客を最良の方法で目的地まで送り届ける義務」を負っている

【Q】タクシーに乗ったら、いつもよりかなり高い料金を請求されました。払うしかないでしょうか。

【A】タクシーに乗っただけで何かの契約をした、と意識はしないかもしれませんが、タクシーに乗る、乗せることで、乗客とタクシー会社との間には、旅客運送契約を結んだことになります。この契約により、タクシー会社は乗客を安全にそして最良の方法で目的地まで送り届ける義務を負います。わざと(故意)、あるいは、間違って(過失)遠回りして、乗客に大目に支払わせるとしたら、この義務に違反することになり、相当額以上多めに支払わされた分を損害として請求できるといえるでしょう。

では具体的にはどうしたらいいでしょうか。まずは、タクシーの運転手さんに、名前をきいてみましょう。一緒に視覚に障がいがない人と同乗している場合には、その人に表示してある名前をメモしてもらうといいですね。それから率直にいつもはもっと安い金額なのだが、どうしてか、どのような経路を通ったのかを聴いてはいかがでしょう。即答はできないかもしれず、もし答えられなくても、そう不自然ではありません。それだけでは怪しくはありません。深追いせずに、いったんは払いましょう。必ず、レシートはいただきましょう。

ところで、納得がいかなくても、いつもよりワンメーターくらいの差だったら、まあわざと多めにとった、ということでもなさそうです。信号が少ない方を回ってみたらかえって交通量が多かったとか、たまたま工事をしていて迂回しなくてはいけなかった、など、まあそんなこともありえます。これといった基準はないですが、たとえば3kmくらい違うな、ということなら、おかしいように思います。
ナビタイムなどを利用して、通常の金額を確認して、あまりにも高い。そうであれば、レシートを手がかりに、タクシー会社に連絡し、率直に、「ナビタイムを利用したら、この走行距離ではこの金額程度のはずだが、そちらの乗務員からこの金額を請求され、支払った。運行経路を説明してほしい。」とし、タクシー会社が落ち度を認めたり、あるいは、説明を拒否したりした場合は、運送義務に違反するとして返金を求めるとよいでしょう。

いきなり裁判、というのも、億劫ですし、裁判にかかる費用を考えると、現実的ではないしょう。各地にあるタクシー近代化センター(東京23区と武蔵野市、三鷹市ならば公益財団法人東京タクシーセンター)に苦情を申し入れてはいかがでしょうか。インターネットでも電話で受け付けています。タクシー会社に直接言うのは気が引けるという場合でも、タクシー近代化センターへ苦情を申し入れるのは、気が楽かもしれませんね。
みなさんが「障がいがあるから仕方がない」と諦めてしまっていた「不便」を、諦めなくてもよくなっていくでしょう。急激な変化は難しいかもしれませんが、誰もが相手を気遣い、暮らしやすい国に変わっていくといいですね。

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