3月21日「世界ダウン症の日」に合わせたスティングの曲がノリノリ!

毎年3月21日は、国連が定めた啓発デー「世界ダウン症の日(World Down Syndrome Day)」。

日本も含め世界中で、「ダウン症」の理解をテーマに、色々なイベントや発表が行われます。今年はコロナ禍のため、オンラインで行われるイベントや発表が多く見られました。 ダウン症の正式名は「ダウン症候群」。染色体の突然変異によって起こり、通常、21番目の染色体が1本多くなっていることから「21トリソミー」とも呼ばれます。ダウン症は、多くの場合、知的な発達の遅れを伴いますが、その程度は人によりさまざまです。

そのなかで、今年70歳を迎える洋楽ロックのレジェンド・アーティスト、スティング(Sting)が、「ザ・ハイヤーリング・チェーン(The Hiring Chain)」という曲を歌っているのをYouTubeで見ました。1分43秒のとても軽快でノリノリなジャズナンバーです。

まずはその動画をご覧ください!

THE HIRING CHAIN performed by STING | World Down Syndrome Day 2021

「ハイヤーリング・チェーン」を翻訳すると「雇用の連鎖」となりますが、歌の雰囲気としては「はたらくがつながる♪」という感じでしょうか。

シモーヌ、ジョン、ソフィア、ケイト、ポール、という5人のダウン症の男女。彼らの雇用が、次々と色々な場所で生まれ、連鎖していく、というストーリーが、英語で歌われています。

ここから、動画を解説していきますね。

まず、パン屋がダウン症の女性・シモーヌを雇います。シモーヌはきちんと働きます。そして、パン屋に来る人の誰もがシモーヌを見て、「この人は仕事ができる」と納得します。

そのパン屋に、弁護士が来ます。弁護士はシモーヌを見て「ダウン症だけど、仕事できるんだ」と知って、「それなら自分もダウン症の人を雇ってみようかな」と考えます。

その弁護士は、同じくダウン症のジョンを雇います。ジョンも真面目に働きます。その弁護士事務所に、歯医者が来ます。歯医者は働くジョンを見て「この人は真面目にできるんだな」と思って、弁護士がパン屋でシモーヌを見た時のように、「自分もダウン症の人を雇ってみようかな」と思います。

歯医者もダウン症のソフィアを雇います。そのソフィアもしっかり働きます。その歯医者に、農家が来ます。農家は働くソフィアを見て、あとは歯医者が弁護士事務所でジョンを見た時と同じ流れです。

農家も、ダウン症のケイトを雇います。ケイトもちゃんと働きます。その農家に、床屋が来ます。床屋は働くケイトを見て、あとは農家が歯科医院でソフィアを見た時と同じ流れです。

床屋はダウン症のポールを雇うんです。ポールも真面目に働くんです。

そこで、最初に出てきたパン屋が、床屋に来ます。パン屋は働くポールを見ます。

パン屋は、ポールが雇われたいきさつを知らないけど、パン屋がシモーヌを雇って、弁護士がジョンを雇って、歯医者がソフィアを雇って、農家がケイトを雇って、床屋がポールを雇いました。

つまりパン屋が最初にシモーヌを雇うと決めたおかげで、これだけダウン症の男女が働くようになったのです!

こんなふうに「ダウン症の人が働く場を広げていきましょう!」というメッセージが、楽しく愉快に伝えられている曲です。

世界ダウン症啓発デー。固くならず、雰囲気を楽しみながら考えるのがいいですね。

スティングの歌詞はこちら(英語)

“The Hiring Chain”  performed by Sting

The Baker hired Simone
and everybody saw
that she could do the job.
The Lawyer went to the Baker
and saw Simone at work.

The Lawyer hired John
because the Baker hired Simone
the Baker hired Simone.
The Dentist went to the Lawyer
and saw John at work.

The Dentist hired Sophia
because the Lawyer hired John
because the Baker hired Simone
the Baker hired Simone.
The Farmer went to the Dentist
and saw Sophia at work.

The Farmer hired Kate
because the Dentist hired Sophia
because the Lawyer hired John
because the Baker hired Simone
the Baker hired Simone.
The Barber went to the Farmer
and saw Kate at work.

The Barber hired Paul
because the Farmer hired Kate
because the Dentist hired Sophia
because the Lawyer hired John
because the Baker hired Simone
the Baker hired Simone.

The Baker went to the Barber
and saw Paul at work
he didn’t have a clue
but it was thanks to his first move
that…

The Barber hired Paul
because the Farmer hired Kate
because the Dentist hired Sophia
because the Lawyer hired John
because the Baker hired Simone
the Baker hired Simone.
the Baker hired Simone.

「ハイヤーリング・チェーン」日本語訳 by スティング

パン屋はシモーヌを雇った
誰もが見た
彼女は仕事ができる
弁護士はパン屋に行って
働くシモーヌを見た

弁護士はジョンを雇った
パン屋がシモーヌを雇ったからだ
歯医者は弁護士事務所に行って
働くジョンを見た

歯医者はソフィアを雇った
弁護士がジョンを雇ったからだ
パン屋がシモーヌを雇ったからだ
パン屋がシモーヌを雇った
農家は歯医者に行って
働くソフィアを見た

農家はケイトを雇った
歯医者がソフィアを雇ったからだ
弁護士がジョンを雇ったからだ
パン屋がシモーヌを雇ったからだ
パン屋がシモーヌを雇った
床屋は農家に行って
働くケイトを見た

床屋はポールを雇った
農家がケイトを雇ったからだ
歯医者がソフィアを雇ったからだ
弁護士がジョンを雇ったからだ
パン屋がシモーヌを雇ったからだ
パン屋がシモーヌを雇った

パン屋は床屋に行って
働くポールを見た
彼は知らないが
それは彼の第一歩のおかげだった

床屋はポールを雇った
農家がケイトを雇ったからだ
歯医者がソフィアを雇ったからだ
弁護士がジョンを雇ったからだ
パン屋がシモーヌを雇ったからだ
パン屋がシモーヌを雇った
パン屋がシモーヌを雇った

スティング本人も、SNSでこのキャンペーンについて紹介。
「今年の<世界ダウン症の日>キャンペーンに参加できて、光栄です。あなたの役割を果たして、今日から雇用の連鎖を始めましょう。」

#WDSD21 #WorldDownSyndromeDay #HiringChain #STING

2021年3月26日追記
ムービーでクレジットされている”Hiring Chain”キャンペーンを展開するダウン症者支援団体CoorDownの方から連絡があり、ここで紹介した長谷ゆうの日本語訳が、YouTubeムービー上でも紹介されることになりました!
現在は、ムービーを観ると日本語字幕が表示されます。

取材・文・翻訳/長谷ゆう
発達障がい。障がい者雇用の知見を活かし、取材・執筆・翻訳しています。noteはこちら