キャロライン・ケーシーさん インタビュー

「Co-Co Life☆女子部」vol.32に掲載した、アイルランドの社会起業家 キャロライン・ケーシーさんインタビュー。読者のみなさんからは「温かく力強いメッセージに生きる希望を見出せた」など、大変な好評をいただいています。

こちらでは、誌面では書ききれなかった部分を特別編としてお伝えします。

笑顔のキャロライン・ケーシーさんの画像
キャロライン・ケーシー(Caroline Casey)さん
49歳、遺伝子性眼白子症による視野狭窄。アイルランド・ダブリン出身。ダブリンのビジネススクールを経て、グローバル企業でコンサルタントとして働く。その後20年に渡り、自ら設立した障がい者雇用支援団体で企業向けのコンサルティングをするほか、障がい者と経営者が一緒に社会を考えるコミュニティ”The Value 500″ を展開中。
ツイッター @CarolineBinc
The Value 500ホームページはこちら

―キャロラインさんが世界的コンサルティング会社に勤めていた時には、どんなことを学びましたか。

障がいのある人の平等への解決において、ビジネスが大きな部分を占めるということです。私はコンサルタントとして働いていた20年前から、” The Valuable 500 ” のようなアイデアを実現したいと考えてきました。

 私が ” The Valuable 500 ” を始めると言い出した時には、周りには常識ではないアイデアに映りました。ですが私は2週間でロゴと計画を作り、スタートしました。

―ずっと時機を伺い続けていたんですね。一度決めたら行動に移すのが速いですね。

 私は昔から、周囲が口を揃えて「ノー」と言っても、構わず突き進んでいました。今では周りの人は、もう私を止めようとしても無駄だということを分かっているようです。

―もう、どこまでもポジティブですね。日本でのセミナーでは、「会社を辞めてインドを旅した時に、コンサルタント時代に比べて自分らしくいられるようになれた」とおっしゃっていました。インドを象で旅しようとは、なかなか考え付かないことです。

あれは冒険でした。まず、インドで女性が象に乗ることが困難でした。インドでは伝統的に象は男性が扱うもの、という考えが根強いです。次に、旅をしたのは最も暑い時期で、48度の気温になる日もあり、強烈な日光に弱い眼白子症(がんしらこしょう)の特性がありながら1000キロもの旅をするのが困難でした。

けれど、あれが私の夢でした。毎日象に乗って、象の体を洗ったり、道端で象と一緒に寝たり。本当にめちゃくちゃでしたが、とても幸せな時間で、今でも心に残っています。

インタビューを受けるキャロライン・ケーシーさんの画像

―キャロラインさんの在籍していた企業も、2019年に始まったThe Valuable 500に初期の頃から参加しているようですね。在籍していた当時と現在で、企業の変化を感じ取りましたか?

 私が働いていた2000年には障がい者が私1人しかいませんでした。それが2020年には3000人になっています。このことが意味するのは、障がい者にインクルーシブなビジネスが増えれば増えるほど、障がい者が平等に生きられるチャンスが増えるということです。

―20年間でそれだけ変わってきたんですね。私の在籍していた企業もThe Valuable 500に参加したのですが、これを機に私の在籍した企業も含め多くの企業が障がい者を一層受け入れる企業に変化していってくれたら、と思っています。

私達の運動はまだ始まったばかりです。でもあなたのように執筆などの行動をする人が増えれば増えるほど、企業は障がい者を雇用するようになります。

―障がい者が才能を見つけていくために、周りの人にはどうしてほしいと考えていますか?

バリアを取っ払って、その人の興味のあることを見つけることです。その人に対して、どんなことができて、どんなことができないか、周りは良いアドバイスをしてほしいです。

今でも視覚障がいの人がマッサージやテープ起こしの仕事をしようとすることは多いですが、視覚障がいの人がみなマッサージやテープ起こしの仕事に就いたりすればいいわけではありません。自閉症スペクトラムの人がみなコンピュータの仕事に就いたりすればいいわけではないのと同じです。視覚障がいですがマッサージやテープ起こしがどうしてもできなかったり、自閉症スペクトラムですがプログラミングがどうしてもできなかったりすることもあります。

そういう場合は「障がいがあるから」と同情を寄せながらフォローするのではなく、別のことをしてみようとアドバイスすべきなのです。同じ人として敬意を払いましょう。

リラックスした表情で笑うキャロライン・ケーシーさんの画像

世界各国で障がいのある人達が社会を変えるために行動しているのを知り、お国柄は違っても、抱えている課題は日本の私達と似たようなことだったりするな、と思いました。こころのバリアフリーは世界共通の流れです。日本の私達も遅れを取らないように、と感じた筆者でした。

Valuable500参加企業、ジャガー・ランドローバーの車を運転する動画。最後に妹さんと2人で抱き合ってうれし泣きされていました。

キャロラインさん、共に来日し、行動をサポートしてきたThe Valuable 500マーケティング担当のカリス・ミラーさん、お2人の来日を招聘した日本財団の石井靖乃さん、インタビューを設定していただいたバリアフリーコンサルティング会社ミライロの合澤栄美さん、英語のインタビュー音源を書き起こししていただいたブラインドライターズの野澤幸男さんと藤本昌宏さんに感謝いたします。

文・長谷ゆう