「障がい当事者」の環境を体感できる「ユニバーサルマナー検定」

オンライン記者発表会の様子

2020年12月3日、「コロナ禍における『誰も取り残されない社会』を目指して」と題された記者発表会が、オンラインで配信されました。

登壇したのは、一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ 代表理事の志村季世恵(しむら・きよえ)さん、同代表の志村真介(しむら・しんすけ)さん、また株式会社ミライロ 代表取締役社長の垣内俊哉(かきうち・としや)さんの計3名。

志村季世恵さん・真介さんが手掛けるイベント「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」「ダイアログ・ウィズ・タイム」は、会場の中で、視覚や聴覚を完全に遮断することで体感できる「不思議な感覚」を味わる、ソーシャルエンターテイメントとして人気を博しています。筆者も体験したことがありますが、日ごろ自分たちが使っている五感の豊かさや、人とのコミュニケーションのあたたかさを改めて感じました。また、年を重ねることの豊かさも体感できました。

 一方、株式会社ミライロは、障がいを価値に変える「バリアバリュー」という言葉を理念とし、これを広めるための活動に取り組んでいます。具体的には、バリアフリー情報を共有するスマートフォンアプリ「Bmaps(ビーマップ)」の提供や、自分とは違う視点に立ち行動するための研修「ユニバーサルマナー検定」などを行っています。 

ユニバーサルマナー検定の様子

コロナ禍における人との関わり方について、志村真介さんは以下のように語りました。「人と人との<見えない壁>が、大きくなっている気がしています。つい最近もまた、電車のホームで視覚障がいのある人の転落事故が起きてしまいました。誰かが声をかけることができたはずです。スマートフォンなどを見ながら、自分の中にこもって周りが見えないという状況が、コロナ禍でさらに加速しているような気がしています。」

一方、垣内さんは現在の障がい者雇用の状況についてこう述べました。「昨年の同じ時期と比べて、コロナ禍により、障がい者の解雇が40%も増えてしまいました。ですが現在、外出自粛が起きていることにより、リモートワークや時差通勤が一般的になってきています。これにより、障がいのある人たちの働き方の選択肢は、間違いなく増えるでしょう」。

健常者と障がい者がともに理解を深め、お互いに支え合い、多様性のある社会の実現に向けて取り組むため、この度、両社の協働が発表されました。

ユニバーサルマナー検定とは?

ユニバーサルマナー検定の様子

さて、ミライロが提供する「ユニバーサルマナー検定」は、多様な方々への向き合うために必要な「マインド」と「アクション」を体系的に学び、身につける検定。これまでで約10万人の受講者が学んでおり、さらに導入した企業は600社以上にものぼっているそう。

検定の3級は、高齢者や障がい者への基本的な向き合い方や、お声がけ方法を学ぶための講座。2級は多様な人々の特徴、心理状況を学ぶ講座と、実践的なサポート方法を身につける実技研修があります。

ユニバーサルマナー検定の様子

今回の記者会見で新たに発表された「ユニバーサルマナー検定1級」は、障がい当事者の「リアルにふれる」体験を通し、受講者自身の体験や、世界観を広げる講座内容。その合格資格の中に、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」と「ダイアログ・イン・サイレンス」が加わりました。

座学のみでは得ることが難しい部分を実体験し、新たな価値観や考えを学んでいく点が、ユニバーサルマナー検定1級の狙いとなっています。

ユニバーサルマナー検定の様子

今、コロナ禍により、以前のような人間同士のコミュニケーションをとることが難しくなっています。そんな時期だからこそ、コミュニケーションの取り方を聴覚や視覚に障がいのある人たちと一緒に学ぶのは、とても素敵なことですよね。

日頃から、制限が伴う状態で生活しがちな私たち「障がい当事者」の環境。ダイアログシリーズや、ユニバーサルマナー検定などを通して、一般のたくさんの方に体験してもらいたい! そこに、今のバリアフルな社会を変えるヒントが隠されているのかもしれません。

●この文のライター: 雨彩(めい)
脊髄小脳変性症・痙性対まひ。平日は睡眠障がいの検査や解析の仕事をしています。現在ライターとしての執筆にも挑戦中。最近ハマっていることは、スマホアプリのパズルゲームと、Amazon Prime Videoの鑑賞。