映画や舞台、ライブ、お笑い。エンターテインメントは本来、誰もが自由に楽しめるものです。ですが、聴覚障がいのある方の中には、「内容が分からず、なかなか足を運びづらい」「周囲が笑っていても、自分だけ置いていかれてしまう」と感じた経験がある方も少なくありません。
そんな中、“手話×お笑い=シュワライ”を掲げ、「聞こえる人も聞こえない人も一緒に笑えるお笑い」に挑戦しているのが、吉本興業所属の芸人ユニット「よしもと手話ブ!」です。手話を使いながらも、“聴覚障がい者向け”だけではなく、誰が見ても楽しめるエンターテインメントを目指して活動しています。
今回は、よしもと手話ブ!のみなさんに、手話を学び始めたきっかけやユニット結成の背景、手話で“笑い”を作る面白さ、そして「みんなで一緒に笑える場」への思いについて伺いました。
さらに、最後にCo-Co Life☆女子部読者のためのイベントのお知らせも!ぜひ最後までご覧ください!
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★よしもと手話ブ!の皆さん
ソイさん(カエルサークル)

きくちこうすけさん

上河内貴人さん

「聞こえない人限定」ではなく、“みんなで笑う”を目指した理由
Co-Co Life☆女子部スタッフ(以下 Coスタッフ) 本日はよろしくお願いいたします。まず、「よしもと手話ブ!」は、どのような経緯で結成されたのでしょうか?
ソイさん よしもと手話ブ!は、手話ができる、興味がある芸人が集まって、手話でお笑いを届けようというユニットで、2019年に立ち上げました。
もともと私が芸人活動とは別に、個人的に手話講習会へ通っていたんです。その時に、ろうの方からお笑いを楽しめないという話を聞いたんです。たしかに、漫才はしゃべりが中心なので、聞こえないと内容が伝わりづらいですし、バラエティ番組も字幕がないと雰囲気をつかみにくいですよね。その言葉をきっかけに、もしかしたらお笑いと手話って掛け合わせられるんじゃないかと思い始め、よしもと手話ブ!を結成しました。
Coスタッフ ソイさんは手話通訳士の資格もお持ちなんですよね。そもそも、手話を学ぶようになったのは、どんなことがきっかけだったのでしょうか。
ソイさん 実は、高校の時に友達と授業中におしゃべりをしたくて、声なしで会話ができる方法として手話を覚え始めたんです。その時はまず友達と指文字※を覚えたんですが、秘密の暗号みたいで面白くて。そこから手話って面白いなと興味を持って、もっと勉強しようと地域の講習会に参加し、手話通訳士の資格を取得しました。
※「あ」から「ん」までの50音を、それぞれ手や指の形で表す表現方法

Coスタッフ すごいですね!きくちさんと上河内さんはなぜ手話を始めたのですか?
上河内さん 僕の場合は、大学の手話歌サークルに入っていた友人とのかかわりをきっかけに興味を持って、地域の手話サークルに入りました。事前勉強として指文字だけ全部覚えてから通い始めて、入ってから手話を本格的に教えてもらいました。やはり実際にろうの方と触れると手話を覚えようという気持ちが強くなって、そこで手話やろうの方の文化を学びましたね。
きくちさん 僕は当時コンビで活動していたのですが、ピンでもイベント活動をしていました。その中で、トークのストックをするために”1時間ずっとしゃべり続ける”というライブをしていて、そのスピンオフとして”1時間ずっと踊り続ける”というイベントを開催したんです。
そこに娘の友達のお父さんもいらしていて、その方が難聴だったんですよ。当時の僕は、難聴とろうの違いを知らなかったんですが、聞こえない中でイベントを楽しめてるのかなって考えた時に、”1時間しゃべり続ける”イベントを手話でやれば聞こえなくても楽しめるじゃん!って思ったんです。実際1時間手話をしたら大変だろうし、その時はその大変さもわかっていなかったんですけど(笑)。
それでソイくんと繋がることができて、手話を教わりつつ、手話ブ!の立ち上げに加わることになりました。
Coスタッフ ソイさんが部長で、きくちさん、上河内さんが立ち上げのメンバーなのですね。手話でお笑いをするっていうと、聞こえない人のためのお笑い、という形になりそうですが、そこを「聞こえる人も聞こえない人も楽しめるお笑い」にした理由はあるのでしょうか?
ソイさん 今あるお笑いのベースに聞こえない人も参加できる環境を作りたかったので、自然と”ろう者限定”という発想にはならなかったですね。お笑いの土壌に来てほしい、一緒に楽しめたらという発想です。
きくちさん やはりベースが芸人としてのお笑い活動なので、聞こえる聞こえないという隔たりの意識はなかったと思います。手話を使って、聞こえない人もひっくるめて笑かす、っていうのが芸人としての自然な考え方なんじゃないかな。
Coスタッフ シンプルに、みんなにお笑いを楽しんでほしいという発想がベースなんですね。

Coスタッフ 実際に手話でのお笑い活動をしてみて、印象に残っている反応はありますか?
きくちさん 「初めて劇場で生のお笑いを見られた」と言ってくださった方がいて、それは本当に印象に残っています。
あと、娘さんだけ聞こえないご家族が一緒に見に来て、娘さんがいすから転げ落ちて床をバンバン叩きながら大笑いしていたのを見た時は、いい景色を見たな…と思いました(笑)。「家族みんなで同じタイミングで笑えたのがうれしかった」という感想もありがたかったですね。
ソイさん 「手話ブ!があるから吉本の劇場に来ちゃったよ」って言ってくださる方もいて。お笑いって、本来は誰でも楽しめる趣味のはずなのに、「聞こえないから」という理由で制限されていた部分があったと思うんです。そこに少しでも変化を作れたなら、すごくうれしいですね。
手話で“笑い”を作る時のポイントとは?
Coスタッフ 手話を使った“笑い”を作る時、いつものネタ作りと違う部分はありますか?
きくちさん 基本的に違いはないです。ただ、語感や言い方に頼ったものなど、音として伝える笑いはわかりづらいので、聞こえる人も聞こえない人もどちらも自然と受け止められるネタを作るよう意識しています。
Coスタッフ 手話だからこそ面白い!というネタもあるのでしょうか?
きくちさん ありますね。パチスロをネタにしたショートコントで、スロットを指の数字で表現するんですけど、なかなか数字がそろわないからやけくそになったところで指文字でメッセージが出るっていう。これは文字が出るだけじゃ面白くならない、手話じゃないとできないお笑いだなと思いますね。
ソイさん やはり手の動きや形で表現するっていうのは手話ならではですよね。あとは、手話を勉強している方もいらっしゃるので、手話の勉強あるあるとか、手話サークルでよくある光景みたいなシチュエーションをテーマにすると聞こえる人も聞こえない人も笑ってくれますね。
きくちさん そうそう、あと手話ならではのノリでいうと、社会の窓(ズボンのファスナー)開いてるよ、と言われて、確認したら開いてない。だから「大丈夫」という手話を、従来の胸の前でするのではなく、股間でする、というネタがありますね(笑)。これも手話ならではの笑いかも。
Coスタッフ 面白い!それは手話でしかできない表現だし、ろうの方にとってはツッコミどころですよね(笑)。
きくちさん そう。いやいや、そこでやんなくていい!みたいな(笑)。

Coスタッフ 今まで活動してきて、特にろうの方にハマる、みたいなポイントってどんなところにあると思いますか? 逆に、全然ウケないポイントとかもあるのでしょうか?
きくちさん うーん、いつもすごくウケるのが、上河内くんがチャーハンを作るショートコントで、これはどこに行ってもとんでもなくウケるんですよ。たぶん、見てわかりやすいのが刺さるんだと思います。

ソイさん 多分、ろう者の視覚優位の文化が、大きくあおって高く上がっているチャーハンとか、オチも含めてその様子が我々以上に見えているんだと思います。ちゃんと見ている人に想像させることができた時は、私たちもやっぱりうれしいですよね。
上河内さん やるごとにチャーハンの腕が上がっていきます(笑)。
ウケないネタについては、面白いかどうかというよりも、どういう意味?という顔をされてしまうこともあります。説明が足りないか、ネタのテーマ自体が違ったかなという時はありますね。
きくちさん 普段のネタもそうですが、一度トライしてみて、伝わらなかったりスベったりしたら改良して、何回かトライしても無理だったらもうやめる、みたいな感じにしています。どうしても僕らは聴者なので、ろう者にはなりきれない。いかに近づいていくかの努力が大事だと思うんで、毎回舞台で勉強させてもらっていますね。
聞こえる人も、聞こえない人も。一緒に楽しむための工夫
Coスタッフ 聞こえる人と聞こえない人の両方が楽しめるネタのバランスは、どのように取っているのでしょうか?
ソイさん 試行錯誤しながらやってきたんですが、私たちが普段話す日本語と日本手話※って文法が違うので、話しながら手話を合わせるのが難しいんです。バランスをとるために日本語対応手話※を使ったり、逆に日本手話でがっつり表情や動きを付けたり、いろいろなやり方がありますが、しゃべりで聞いても、手話で見ても、お笑いとして面白いところはちゃんと残して表現するっていうのはすごく難しいですね。
※日本手話…独自の文法を持つ、日本語とは別の自然言語による手話。単語で表現する。
※日本語対応手話…日本語の語順に合わせて単語を当てはめる手話。単語だけでなく、助詞や語尾も表現する。
きくちさん そのボケの意図に合わせて、手話でそのまま伝えられる表現をするようには意識していますよね。たとえば語感に合わせると手数が多くなる時は、日本手話にしてパッとわかるようにするとか。
Coスタッフ やはり、お笑いに大事なテンポや間の感覚などもかかわってきますよね。
きくちさん そうですね。ろう者独特のテンポもあるので、そこも難しいです。どうしても、音でパッと聞いた時と、手話を見て理解するまでのタイムラグがあるんで、僕たちがちょっと待つ時もあります。だから聞こえる人は「なんで今止まってるの?」ってなることもありますね。
でも、こういう雰囲気含めて手話ブ!のネタとして受け取ってもらえればいいなと思ってます。ろう文化、聴文化が入り混じっている空間を楽しんでもらいたいですね。
Coスタッフ たしかに、他のお笑いライブでは経験できないですよね! 他に、手話ブ!ならではのライブの特長ってありますか?
ソイさん 手話ブ!のお笑いライブはお客さんとの距離がすごく近くて、初めてお笑いを見に来た人も一瞬でアットホームな環境を感じてもらえると思います。

上河内さん 僕はお客さんとネタ中に会話することもあります(笑)。隣で2人がネタをしていても、手話なら音がないから邪魔にならないし、「さっきの手話はちょっと違う」とか指摘してもらえたり、それを見ているお客さんも会話を含めて楽しんでくれたりします。
きくちさん あとライブの構成も、いきなりネタを始めるのではなく、まずは一度出てしゃべって空気を作ってからネタに入るようにしてます。いきなり始めると漫才なのかなんなのかわからないかなと思うので。
ソイさん 最初のトークで我々の手話のクセとか話し方を理解してもらう時間にできるし、私たちも聞こえる人と聞こえない人がどのくらいいるか、初めて来た人はどれくらいかとかも分かるので、この時間は大事にしています。
Coスタッフ 最初にコミュニケーションの時間があるんですね!
ソイさん 交流以外では、視覚的にわかりやすいように、開演の時にライトを点滅させたり、ゲームの時はマルやバツをライトで表したり、音だけでなくて見た目で理解できるように工夫しています。スタッフの方にも、誘導の時にボードを出してもらったり、筆談できるようにしてもらったりもしていますね。
あとは、服装も手が見えるように単色のものを着ています。通常の芸人の発想では逆で、派手で明るい色を選ぶんですが、手話ブ!の活動の時は、暗いトーンの服で手や指の動きが見えやすいようにしています。
きくちさん だから上河内くんの半そでも、ただのわんぱくじゃなくて、手が見えやすいようにしてます(笑)。
上河内さん そう、冬の屋外イベントもこれです(笑)。より伝わりやすいようにってことで。
きくちさん うん、滑舌がいい方がよりいい、という発想で衣装選びをしています。
でも僕らのライブでは、逆に手話通訳がいないのも、他のライブとの違いかもしれないですね。我々が手話をするので。
ソイさん そうですね。手話通訳さんによって、芸人の動きや表情の見方が変わってしまうので、できれば本人がそのまま手話ができるのが、芸人的にはベストだなと思いますよね。
無料読者限定イベントが決定! “フラットにお笑いを楽しんで”
Coスタッフ 改めて、お笑いユニットとしての「よしもと手話ブ!」の強みをどのように考えていますか?
きくちさん 僕らだけで90分とかできます(笑)。コンビの時は長くても1回15分くらいなんですけど、手話ブ!で何かやってくださいと言われたら、1時間でも2時間でも背負えますね。そういうお笑いユニットってあんまりないんじゃないかな。
ソイさん ここから90分どうぞ!って言われても、成立させられますね。今までの経験で、お客さんと時間に合わせられるので、30分ならこれ、90分ならこれ、っていうのを確立できてきたと思います。
上河内さん でもその経験って、それぞれの芸人としての経験があるからこそっていうのもあると思います。
きくちさん たしかにそれもあるかもね。普段ソイくんは女性コンビで、僕も前はコンビでやってて、上河内くんはピンじゃないですか。それぞれテイストが違うっていうのもありますよね。
Coスタッフ それぞれの要素がユニットに活かされているのですね!

Coスタッフ そんなよしもと手話ブ!の皆さんには、Co-Co Life☆女子部の読者限定のイベントに出演していただくことになりました。Co-Co Life☆女子部としても、久しぶりの大型読者イベントなのですが、ぜひ読者の方にメッセージをお願いいたします!
ソイさん はい、まずは聞こえる聞こえない、手話に興味あるなしにかかわらず、フラットにお笑いライブを見に来ていただけたらと思います。手話の勉強をしようとか興味をもたなきゃとかっていうハードルは持たずに、楽しんでもらえたらいいかな。よしもと手話ブ!はエンタメなので。ぜひ手ぶらでいらしてください!
きくちさん 精神的手ぶらで!(笑)
ソイさん あ、手話単語をいくつか覚えて帰れるお土産付きです!(笑)
Coスタッフ ありがとうございました(笑)。私たちもお土産をいただきつつ、楽しませていただこうと思います!

思っていた以上に、手話×お笑いの奥深さを知った今回のインタビュー。取材中は終始笑いが絶えず、お笑い芸人さんの笑いの底力を改めて感じました。ぜひ実際のネタを見に、イベントにご応募ください!
★「Co-Co Life☆女子部読者限定!よしもと手話ブ!お笑いライブ」詳細
【日時】 7月18日(土)午後(当選者の方に詳細な時間をご連絡いたします)
【会場】 東京都千代田区(当選者の方に会場の詳細をご連絡いたします)
【参加費】 無料
【定員】30名 ※応募多数の場合は抽選となる場合があります
【対象】
読者サポーター登録者限定
障がいの種類は、聞こえる・聞こえないに関わらず、どなたでもご参加いただけます。
読者サポーター登録(無料)はこちら!
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【応募方法】 以下の応募フォームよりお申し込みください。
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【応募締切】 6月10日(水)中まで
※当日は記録撮影が入る予定です。あらかじめご了承ください。
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写真:渡邊 誠 取材・文:関 由佳