遠藤Pの「ちょっと聞かせて」その4・W2-Dress 宮澤久美さん|車いすユーザーの「着たい」を形に。結婚式で輝く一着を届けたい

Co-Co Life☆女子部のプロデューサーで、団体代表の遠藤久憲が会って話したい、と感じた方と対談をする企画『遠藤Pの「ちょっと聞かせて」』。第4弾は、車いす用ウェディングドレスブランド「W2-Dress」を手がけるデザイナー・宮澤久美さん。

車いすユーザーが「着られる」ではなく、「着たい」と思える一着を届けたい──。そんな思いから生まれた「W2-Dress」は、多くの人の夢を叶えてきました。さらに現在は、障がいの有無にかかわらず誰もが楽しめる音楽フェス「逗子ライブインクルーシブ」にも取り組んでいます。宮澤さんのものづくりに込めた思いや、その活動について伺いました。

宮澤さんが手がける車いす用ウェディングドレスの試着撮影会については、こちらの記事で詳しく紹介しています!

「着られる」ではなく「着たい」を選べる!車いす用ウェディングドレス試着会レポート

「その人らしく、一番素敵に見える一着」を叶えるドレスづくり

遠藤P 逗子でのウェディングドレス試着会、ありがとうございました。盛り上がりましたし、またやりたいですね!

宮澤さん そうですね。思えば、私が2019年にウェディングドレスブランドを立ち上げようとした時、Co-Co Life☆女子部の存在を知って、広告を出させてもらったところから始まったんですよね。初めてCo-Co Life☆女子部の冊子を見た時は、こんなにかわいくておしゃれな車いすの女性がたくさん!と驚きました(笑)。衝撃でしたね。

遠藤P そうでしたか(笑)。でも交流し始めたのは最近ですよね。私も以前ウェディング業界に携わっていたこともあり、また何かやりたいと思っていたところだったので、試着会ができてよかったです。

改めて、車いす用のウェディングドレスを作り始めたのは、どういったきっかけがあったんですか?

宮澤さん 35年前に、母が「脊髄小脳変性症」という難病になったんです。だんだん体が動かなくなっていく中で、母が着たい服を着られるように服を直すようになって。そこから障がいのある方が着やすい、オーダーメイドの服を作るようになりました。

遠藤P それまで障がいのある方の服づくりに着目したことはなかったんですか?

宮澤さん そうですね。今では服飾の学校でも取り上げられていますが、昔はそうした学びもなく、私自身にもそういう発想はありませんでした。

遠藤P そこから、車いす用のウェディングドレスを作るに至るまでには、どんなきっかけがあったのでしょうか? 

宮澤さん 2018年に、鎌倉で開催されたユニバーサル合コンの主催者の方に、バリアフリーなウェディングドレスを作れませんか、と依頼されて、その時初めて車いす用のウェディングドレスを作ってみたんです。実際に、車いすの女性に着てもらったら、半端じゃなく喜んでくれて(笑)。「キャーッ♡」ってはしゃいで自撮りをしている姿を見て、やっぱりどんな人もかわいいドレスを着たら気持ちが上がるんだなと改めて感じたんです。でも、探してみたらかわいい車いす用ドレスがなくて。そこから車いすウェディングドレスを作ろうと、2019年にウェディングドレスブランド「W2-Dress」を立ち上げました。

遠藤P それからCo-Co Life☆女子部のフリーペーパーへの広告掲載を依頼した、ということですね。6月11日の試着会も、みんな大喜びでしたよね!私も一般的なウェディングドレスはたくさん見てきましたが、車いす用のドレスは作りが全然違うなと驚きました。 

宮澤さん そうですね。通常のドレスのファスナーは背中にありますが、このドレスは着やすいように脇にファスナーがあり、車いすに座ったまま前からかぶせるようにして着ていただきます。ドレスの下にエプロン型のパニエをつけてもらって、車いすの車輪にドレスが巻き込まれないようにしています。

遠藤P そう、撮影中も、前側にパニエを入れているのを見て、衝撃でした。車いす用だと、前に入れるんですね。

宮澤さん そう、あの時は横にドレスを張り出させたくて、バランスを見て前にふくらみを入れました。要するに、縦横の比率というか、全体のバランスなんですよね。

遠藤P デザインにはどんなこだわりがあるんですか?

宮澤さん まず第一に、背が低くてもシルエットが美しくなる、ということです。一般的なドレスは、立って着て美しく見えるデザインで作りますが、車いすは座るので、全体の身長も低いですよね。なので、座って着てかわいらしく見えることを最重要視しています。

あとは、着るご本人が望むデザインを作ることですよね。それがデザイナーとしての仕事の一番の肝だと思っています。

遠藤P 今までで一番苦労したドレスってどんなものがありましたか?

宮澤さん 以前、身長が120センチに届かないくらいの、骨形成不全症の女性のために、マーメイドのウェディングドレスを作ったんですが、これはとても大変でしたね。その方は「子どもっぽいものは絶対に嫌。大人っぽくてクールなマーメイドドレスが着たい」と希望されていたんですが、足の長さや体のバランスを考えると、普通のマーメイドドレスをそのまま小さくするわけにはいかなくて。やはり、その方が一番素敵に見えるドレスを作らないといけないと思いました。

実際に製作したマーメイドドレス

遠藤P それはなかなか難しい条件ですね……。どのように作ったんですか?

宮澤さん 人魚っぽい足元のシルエットをどう表現するか、パニエの入れ方や車いすの昇降に合わせた動きまで工夫して、完成まで1年ほどかかりました。でも、その方は名古屋から横浜まで2回も試着に来てくださって、完成したドレスを本当に喜んでくださったんです。水族館でウェディングフォトを撮りたいという夢も叶えられて、すごく印象に残っています。でも、いろいろな問題を考え抜いて、作り上げたドレスを着ていただいた時の「ありがとう」は、とってもやりがいを感じる瞬間ですね。

遠藤P その時は苦しいけれど、乗り越えるとまた違う感覚になりますか。

宮澤さん はい、楽しいですよ! 悩みながら作っている時も楽しいんですけどね。贅沢な仕事だな、と感じています(笑)。

遠藤P あとデザインに関して、撮影会でヘッドドレスの効果を強く感じたんですが、車いすのファッションを取材していると「上からの視線を意識する」という声をよく聞きました。やはり、車いすドレスも上から見られることを前提に全体をコーディネートしているんですか?

宮澤さん そうですね。車いすドレスは座っているのでお腹の部分は目がいきにくいのですが、一方で肩や膝のあたりは見られやすいです。なので、肩のあたりにふわっとした袖をつけたり、膝が折れるところにお花やフリルなどの装飾を持ってきたりします。一般のドレスとは視点が違う、というところもデザインする上で重要ですね。

遠藤P こだわりが詰まっていますね。ドレスを実際に着た方からいただいた、印象的な言葉はありますか?

宮澤さん 結婚式の不安がワクワクとドキドキに変わりました、という感想をいただいた時はうれしかったですね。せっかく結婚が決まってうれしいのに、結婚式の準備を始めたらドレスが着られないんじゃないかという不安を感じてしまうのは、やっぱりつらいですよね。だから、いつもドレスを作る時は「結婚式が楽しみになるように」と思っています。

遠藤P 一般の方もドレスを何着も試着すると疲れますよね。でも、宮澤さんのドレスなら座ったままで着られるから疲れにくい。そういう要素も楽しみに変わりそうです。

宮澤さん そう、2時間くらいで3、4着試着して、どっちがいい? こっち? なんてキャッキャして帰っていく方ばかりですよ(笑)。

音楽もファッションも共通するのは「人をつなぐきっかけ」

遠藤P 実は今日は、ウェディングドレスのお話だけでなく、宮澤さんが取り組まれている「逗子ライブインクルーシブ」のお話もぜひ伺いたいと思っていました。以前からとても気になっていたんですが、どんなきっかけで始められたんですか?

宮澤さん 逗子ライブインクルーシブは、2024年に始めた取り組みで、2026年で3回目を迎えました。きっかけは、毎年3月に逗子市で開催されている共に生きる「トモイクフェスティバル」です。プロデュースを引き受けてくださった、自身も障害のあるプロデューサーから「いろんな人が混ざり合うガラコンサートのようなものをやりたい」「障害のあるアーティストの演奏機会を増やしたい」という言葉を聞いて、自分が実行委員長を引き受けることで、また誰かを喜ばせることができるのかもしれない、と思ってしまったんですよね(笑)。

遠藤P 宮澤さんご自身も音楽がお好きなんですか?

宮澤さん はい、私も音楽はすごく好きです。子どものころ、親の仕事の都合でコスタリカ共和国にいて、そこでギターを始めて、時々弾いています。

遠藤P それは知らなかったですね。障がいのある方のドレスを作りながら、音楽の場づくりをするって面白いです。

宮澤さん 逗子ライブインクルーシブのコンセプトは「音楽は最初からずっとインクルーシブだ」と伝えていくことなんです。音楽って何の垣根もないし、聴く人も演奏する人も選ばないですよね。実は、障がいのあるミュージシャンが出演できる場って、福祉イベントや無料の野外イベントなどが多いんです。でも、障がいがあってもプロ級の才能がある方もいる中で、その方々が活躍できる場がそこしかない、というのはやっぱりもったいないですよね。トップアーティストと同じ舞台に立ち、一緒にコンサートをつくったら、今までにない素晴らしいものになるのではというのが、最初の発想ですね。

戸田恵子さんらをお招きして子どもたちと手話で歌った『アンパンマンマーチ』

遠藤P なるほど。実際、3年続けてみてどうですか?

宮澤さん 最初のころは本当に運営が大変だったのですが、出演者の方やそのご家族から「こんな舞台に出られるなんて」とか「ありがとう」と言われたり、観客の方から「素晴らしかった」「こんなふうに混ざり合えた音楽は聞いたことがない」なんて言ってもらえて、やはりやりがいになりますね。

今年はクラウドファンディングを実施し、大型で誰にでも見やすいLED字幕を導入しました。また、視覚障がいのある方にライブ開催前に、ホールの立体模型に触れていただき、実際の会場をご案内するタッチツアーも開催するなど、音楽以外の部分でもインクルーシブな取り組みに挑戦しました。

模型を使ってタッチツアー

遠藤P 進化していますね。インクルーシブな音楽イベントだからこそ苦労していることってありますか?

宮澤さん やはり障がいによって難しいことをどう乗り越えるか、というのはいろいろ考える必要があります。例えば、脳性まひのバイオリニストの方が出演した時、演奏技術は十分にあるのですが、楽譜を一瞬で見て弾くということが難しかったんです。どれがどの音なのか、どこにシャープが付いているのかといったことを、じっくり見て理解する必要がありました。そういった課題を、さまざまな人が混ざり合う中でどう解決するか。みんなで考えることは、とても大きな出逢いという副産物であり 有意義な時間になりました。

遠藤P さっきもドレス作りで「問題解決は面白い」とお話ししていましたが、やはり悩みながら作り上げることに楽しさを感じるのかもしれませんね。

宮澤さん そうですね(笑)。音楽もファッションも同じなんですが、初めて会う人同士でも、間に共通の話題があると一瞬で溶け合えるんです。ファッションなら、「その服かわいいね」という会話から自然に仲良くなれますし、音楽も同じで、例えば逗子ライブインクルーシブのリハーサルで、片腕のギタリストに対して、プロのミュージシャンが「どうやって弾いているんですか?」と演奏の仕方を聞いて、自然に会話が広がっていく様子を目にしたことがあります。そうやって、音楽でもファッションでも共通のツールがあると、障がいの有無は関係なくなり、人と人をつなぐきっかけになるんだと思っています。

好奇心が”新しい道を作る”原動力に

遠藤P 車いすのウェディングドレスや音楽イベントの運営など、さまざまなインクルーシブな活動に取り組まれていますが、その原動力になっているものとは、ズバリ何ですか?

宮澤さん うーん、自分が知らない世界を知ることに対する好奇心、でしょうか。よく私の活動を見て「すごいですね」とか「えらいですね」と言われることもありますが、自分ではあまりそういう感覚ではないんです。私は単純に、知らない世界を知ることがすごく楽しいんですよね。例えば、全盲のピアニストの方から点字楽譜の話を聞いた時も、「そんな世界があるんだ!」と驚きました。どうやって演奏しているのか、その裏にはどんな工夫があるのか。そういう工夫や発想を知るのが本当に興味深くて。知らない世界に触れて、それを形にしていくことが楽しいんです。きっと、私は好奇心旺盛なんですね(笑)。

遠藤P 私も片手でするヘアアレンジの特集をした時、そんなふうにできるなんてすごいなと思ったことがあるので、その感覚はわかります。

宮澤さん 日々勉強というか、教えられることは多いですよね。

遠藤P そんな精力的に活動されている宮澤さんですが、これからどこへ向かっていこうと考えていますか?

宮澤さん 実は、私の旧姓は「作道(つくりみち)」というんですが、車いすウェディングドレスも逗子ライブインクルーシブも、障がいのある方が今できないことができるようになる”道を作っている”のではないかと、時々思うことがあるんです。今、車いすの中高生が、大人になったらウェディングドレスを着たいなと思った時に普通にイメージできる世界があれば、将来の希望になりますよね。好奇心のままにやってきたことが、実は道を作っているって不思議だけど、何十年か後に、車いすユーザーが当たり前にウェディングドレスを着て結婚式を挙げている姿を見ることができたら最高ですね。

遠藤P じゃあ、これからも新しい道を探しつつ。

宮澤さん そうですね、新しい道を探しながら、今ある道もきれいに整えながら。

遠藤P これから、私もブライダルをもっと一緒に進めていけたらと思っていますので、今後もぜひお互いに道を作っていきましょう。今日はありがとうございました!


ドレスづくりの話からインクルーシブな音楽フェスまで、お話を伺うほどに、宮澤さんの好奇心と柔軟な発想が、さまざまな活動につながっていることを感じた今回の対談。楽しさや好奇心を原動力に、終始明るく語る姿も印象的でした。

これからの活動にも注目していきたいと思います。宮澤さん、ありがとうございました!

※一部、登場した方のお考えに則り「障がい」表記を「障害」としています。

宮澤久美(みやざわ・くみ)さん
文化服装学院アパレルデザイン科卒業。車いす用ウェディングドレスブランド「W2-Dress」代表・デザイナー。35年前、難病を患った母の服を手掛けたことをきっかけに、障がいのある方のオーダーメイド服づくりを開始。2015年にオーダーメイドの服づくり工房「Mトワル」を設立。2018年にユニバーサル合コンをきっかけに車いす用ウェディングドレスを製作し、翌年「W2-Dress」を立ち上げ。2022年には障害者のサポート付き結婚式サービス「HopeWeddings」の共同経営者として結婚式衣装を担当。2024年から、障がいの有無を問わず誰もが楽しめる音楽フェス「逗子ライブインクルーシブ」の実行委員長も務める。

車いす用ウェディングドレス「W2-Dress」
サポート付き結婚式サービス「HopeWeddings」
逗子ライブインクルーシブ
最新情報はこちらでチェック→ 逗子ライブインクルーシブ 公式Instagram

写真:渡邉 誠 取材・文:関 由佳

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