障がいがあると避難所に行けない? 避難所での配慮と「福祉避難所」について調べてみた

地震や台風などの災害が起きたとき、避難先としてまず思い浮かぶのが「避難所」。しかし、障がいや病気がある人の中には、「避難所まで移動できるだろうか」「必要な介助を受けられる?」「大勢の人がいる場所で過ごせるかな」など、不安を感じている人も少なくありません。

実際に、2025年にCo-Co Life調査部が障がい当事者を対象におこなった「障がい当事者に聞く「防災」に関する調査」でも、避難所への移動や設備、集団生活、必要なケアなどについて、さまざまな声が寄せられました。

では、障がいや病気のある人が避難所を利用する場合、どのような配慮が想定されているのでしょうか。また、一般の避難所で過ごすことが難しい場合には、どのような選択肢があるのでしょうか。今回は、国のガイドラインなどをもとに、避難所での配慮や「福祉避難所」の仕組み、災害が起こる前に確認しておきたいことを紹介します。

障がいがある人への配慮、避難所ではどうなっている?

避難所では、障がいや病気などによって配慮が必要な人に対し、その人の状況やニーズに応じた対応をおこなうことが想定されています。

内閣府の「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」では、高齢者や障がい者、乳幼児など、避難生活で特に配慮が必要な「要配慮者」について、それぞれの状況に応じた対応をおこなうことが示されています。一般の避難所では要配慮者のためのスペースを設けることなどが求められており、一般の避難所での生活が難しい場合には、福祉避難所などで対応することも考えられています。

また、障がいのある人への「合理的配慮」は、誰かの善意によっておこなわれるものではありません。障害者差別解消法では、障がいのある人から社会の中にあるバリアを取り除くための対応を求められた場合、過重な負担にならない範囲で、必要かつ合理的な対応をおこなうことが求められています。

ただし、必要な配慮は障がい名だけで決まるものではなく、同じ障がいがあっても、困ることや必要なサポートは一人ひとり異なるもの。また、災害時には施設の設備や被災状況、人員、物資などが限られ、必要な対応がすぐには実現できないことも考えられます。

配慮を十分に受けられないということに納得しづらいところもありますが、そうした状況も鑑みて、自分が避難所で生活するためには何が必要なのかを先に考えて、平時から自治体などに対応を確認しておくのも一つの方法です。

避難所では、どんな配慮が想定されている?

では、実際に避難所ではどのような配慮が想定されているのでしょうか。

Co-Co Life調査部のアンケートでは、避難所を利用する際のハードルについて、さまざまな声が寄せられました。

必要な情報を受け取るための配慮

「補聴器を失くせない、雨に濡れたら壊れてしまうので避難所で情報が集められない、人が怖いので頼れない」(50代・聴覚障がい)

内閣府の「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」では、障がいのある人には情報が伝わりにくいことがあるため、それぞれの状態に応じて伝達方法を工夫することが示されています。

たとえば、聴覚障がいのある人には掲示板や手話通訳、要約筆記など、視覚障がいのある人には点字や音声、知的障がいや精神障がい、発達障がいのある人などには、分かりやすい短い言葉や文字、絵や写真を使うといった方法。

一つの方法だけではなく、その人の状態に応じた情報提供が求められています。

移動やトイレ、生活スペースへの配慮

「いすなしでの立ち座りができないので、床での生活はできない可能性が高いと予想します」(40代・膠原病)

「車いす利用者であり、現在子育て中なので子どもと安全に利用できるのか?という、情報がないこと」(40代・脳性まひ)

アンケートではほかにも、避難所の段差やエレベーターの有無、車いすで利用できるトイレなど、施設そのものに対する不安が多く挙がりました。

内閣府の指針では、一般の避難所でも、必要に応じて障がいのある人や医療的ケアが必要な人などが利用できる「要配慮者スペース」を確保できるよう、あらかじめ考慮することが示されています。

生活空間についても、パーティションや段ボールベッド、エアーベッドなどの簡易ベッドを備蓄し、避難所の開設時に設置するなど、居住環境を確保することが重要とされています。全員に行き渡らない場合には、高齢者や障がい者、女性など、あらかじめ優先する人に提供することも示されています。

トイレについても、携帯トイレや簡易トイレ、仮設トイレなどを確保するとともに、照明や手洗いなどの環境整備、バリアフリーに取り組むことが求められています。

大勢の人と同じ空間で過ごすことが難しい場合への配慮

「人が多い場所ではパニックになってしまったり、避難で見通しが立たないことに対して、とても不安を感じます。体調を崩してしまう可能性もあると思います」(30代・統合失調症)

避難所には多くの人が集まり、普段とは大きく異なる環境で生活することになりますが、人の多さや音、光、においなどが大きな負担になる人には不安な状況です。

厚生労働省では、刺激に敏感な人について、音を遮るヘッドホンやサングラス、マスクなどを使用できるようにすることや、不安が強くなった場合には本人をよく知る人に配慮の方法を確認することなどを例として挙げています。

また、内閣府のガイドラインでは、避難所内に要配慮者のためのスペースを設けることも想定されています。

医療や服薬、日常的なケアを続けるための配慮

アンケートでは、薬や日常的なケアについての不安も寄せられています。

「薬がとても大切で必要なので、どうしようとよく思います」(20代・エーラスダンロス症候群)

内閣府の指針では、避難所で避難者の保健・医療ニーズを把握し、必要な支援につなげるための体制を整えることが示されています。また、避難所では保健師などが巡回し、避難者の健康状態や医療ニーズを把握して、必要に応じて外部の医療機関などにつなげることも想定されています。

さらに、人工呼吸器を使用する難病のある人や障がいのある人、医療的ケアが必要な人がいる場合には、優先的に電源を使用できる環境を整えることが適切とされています。

このほかにも、避難所で必要になる配慮は人によってさまざまです。厚生労働省では「避難所等で生活する障害者への配慮事項等について」で、障がいの特性などに応じた具体的な配慮例を紹介しています。

ただし、こうした配慮があっても、一般の避難所での生活が難しい人もいます。その場合にはどのような選択肢があるのでしょうか。

一般の避難所で生活するのが難しいときは?

一般の避難所でさまざまな配慮を受けられたとしても、障がいや病気の状態によっては、そこで生活すること自体が難しい場合もあります。

Co-Co Life調査部のアンケートでも、

「エアマットレス、ポータブルトイレなどが揃っていない環境には避難できないと思う」(40代・四肢機能全廃/ミオパチー)

「化学物質過敏症とアレルギーがあり、避難所では生活できないと思う」(40代・脊椎関節炎/上肢下肢機能障がい)

などの声が寄せられました。

こうした一般の避難所での生活が難しい「要配慮者」のために設けられているのが、「福祉避難所」。

内閣府では、福祉避難所を、高齢者や障がい者、乳幼児など、一般の避難所では生活に支障が生じる可能性がある人を受け入れる避難所と位置づけています。

また、一般の避難所に「要配慮者スペース」を設けて一時的に避難し、その後、福祉避難所へ移るという方法もあります。さらに、在宅での生活を続けることが難しく、より専門的な支援が必要な場合には、社会福祉施設への緊急入所や緊急ショートステイなどで対応することも示されています。

つまり、必ずしも「一般の避難所で生活するのが難しい=避難できない」とは限らないということ。必要な支援や本人の状態などに応じて、一般の避難所の要配慮者スペースや福祉避難所、社会福祉施設など、いくつかの避難先や支援方法という選択肢もあるのです。

では「福祉避難所」とは、具体的にどのような場所なのでしょうか。

「福祉避難所」ってどんなところ?

「福祉避難所」と聞くと、障がいのある人専用の避難所をイメージするかもしれませんが、対象となるのは障がい者だけではありません。

内閣府の「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」では、高齢者や障がい者、乳幼児など、避難生活で特に配慮を必要とする「要配慮者」を主な受入対象としています。

福祉避難所には、要配慮者が利用しやすい施設であることと、相談や助言などの支援を受けられる体制が整っていることなど、一定の基準があります。実際に福祉避難所として使われる施設は、特別養護老人ホームや障がい者支援施設などの社会福祉施設のほか、一般の避難所となっている特別支援学校、宿泊施設など、地域によってさまざまです。

また、福祉避難所では、避難する人に必要な物資や器材、人材などを確保する体制づくりが求められています。上述した内閣府のガイドラインでは、介護用品や衛生用品、ベッド、車いすなどの物資・器材を確保するとともに、生活相談員などの専門的な人材を確保することなどが示されています。

ただし、すべての福祉避難所が、あらゆる障がいや病気のある人を受け入れるわけではなく、施設ごとに「高齢者」「障がい者」「妊産婦・乳幼児」など、受入対象者をあらかじめ特定している場合があります。

※福祉避難所には、市町村が災害対策基本法に基づいて指定・公示する「指定福祉避難所」と、市町村が社会福祉施設などと協定を結ぶなどして確保する福祉避難所があります。本章では総称して「福祉避難所」と表記しています。

福祉避難所には直接避難できる?

では、災害が起きたとき、自分で福祉避難所へ直接向かってもいいのかというと、少々微妙なライン。自分が福祉避難所の対象になるのか、直接避難できるのかは、住んでいる自治体や施設によって異なります。

まず、福祉避難所には、直接避難できる場合がありますが、障がいや病気がある人なら誰でも、近くの福祉避難所へ自由に直接避難できるというわけではないのです。

現在は、市町村が指定する「指定福祉避難所」について、あらかじめ受入対象者を決めて公示できる仕組みが設けられています。また、内閣府の「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」では、個別避難計画などを作成するなかで、どの福祉避難所に誰が直接避難するのかを事前に調整し、災害時の直接避難につなげることが示されています。

もし利用を検討する場合は、福祉避難所の場所だけでなく、「誰を受け入れる施設なのか」「直接避難するには事前の調整が必要なのか」なども、平時のうちに自治体へ確認しておくとよさそうです。

ただ、希望するすべての人が指定福祉避難所へ直接避難できない場合などには、まず一般の避難所に設けられた要配慮者スペースへ一時的に避難し、その後、指定福祉避難所へ移る方法も想定されています。

災害が起きる前に、自分の場合を確認しておこう

ここまで読んで、「結局、自分はどこへ避難すればいいの?」「必要な配慮を受けられるの?」と思った人もいるかもしれません。

実際、Co-Co Life調査部のアンケートでも、

「支援や避難、災害時対策など情報がないことが一番困ります」(40代・脳性まひ)

「避難所の障がい者への対応がどのように考えられているか不安」(50代・頸髄損傷)

といった声が寄せられています。

実際に災害が起きてから、自分に合った避難先や必要な支援を一から探すのは簡単ではないので、まずは住んでいる自治体のWebサイトなどで、指定避難所や福祉避難所について調べるところから始めてみてください。

そのうえで、一般の避難所で生活する場合にどのような配慮が受けられるのか、福祉避難所の対象になるのか、直接避難できるのかなどを確認。Webサイトだけでは分からないことがあれば、自治体の防災や福祉の担当窓口に確認してみるのも一つの方法です。

また、一人で避難することが難しい方は、「個別避難計画」の対象になる可能性もあります。個別避難計画とは、災害時に自力で避難することが難しい「避難行動要支援者」について、「誰と」「どこへ」「どのように」避難するのかなどを一人ひとりの状況に合わせて決めておく計画のこと。市町村が本人や家族、福祉専門職、地域の支援者などと連携して作成を進めています。

福祉避難所へ直接避難する場合にも、この個別避難計画などを通して、避難先や受け入れについて事前に調整することが想定されています。自分が対象になるのか分からない場合には、自治体に問い合わせてみましょう。

そしてもう一つ考えておきたいのが、「避難先で自分が生活するために欠かせないものは何か」ということ。

常用薬やお薬手帳、補装具、医療機器、ストーマ用品など、人によって必要なものは異なります。アンケートでも、常用薬や介護用品、医療的ケアなど、災害時に普段の生活を維持できなくなることへの不安が数多く寄せられていました。

すべてを自分だけで備えなければならないわけではないですが、事前に「自分には何が必要か」「どんな環境なら過ごせるか」「どんなサポートが必要か」を整理しておくことで、自治体などに確認するときにも具体的に相談しやすくなるはずです。


地球環境の変化などで、世界中で想定外の災害が発生している昨今。いつ自分が当事者になるか、誰にもわかりません。

災害時にどこへ避難し、どのような支援を受けられるかは、住んでいる地域や一人ひとりの状況によって異なりますし、「そのときになれば何とかなる」とは言い切れないからこそ、まずは自分の地域ではどのような選択肢があるのか、一度調べるところから始めてみましょう。

・今回紹介したアンケートについて
Co-Co Life調査部が実施した「障がい当事者に聞く『防災』に関する調査」では、災害への備えや避難所に対する不安など、障がい当事者のさまざまな声を紹介しています。詳しい調査結果はこちらからご覧いただけます。

▶「障がい当事者に聞く『防災』に関する調査」

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