打越さく良先生の法律相談 連載第8回 障がいを理由に住んでいる物件から追い出されそう!

【第8回】説明もない以上、応じなくてよいでしょう

【Q】私はある賃貸マンションをお借りして、問題なく数年住み続けています。ところが最近私が障がい者であることを知った不動産会社から、「障がいは契約に関わる非常に重要な内容です。障がい者手帳のコピーをお送りいただき、詳細を教えてください」と言われました。障がいは、プライベートなことなので、主治医でもない第三者に教えたくありません。ですが、不動産屋から悪く思われて、今、住んでいる物件から追い出されるのも怖いので、強く言い返せません。

【A】不動産会社など、事業者は、障がいを理由として、障がいでない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障がい者の権利利益を侵害してはならないことになっています(障害者差別禁止法8条1項)。障がい者手帳のコピーの交付や詳細の情報提供を求めることは、差別的取扱いといえるでしょう。そうすると、その取扱いが不当か、それとも正当な理由があるかが、問題となります。

不動産会社は、「障がいは契約に関わる非常に重要な内容」と言っているそうですが、果たしてそうでしょうか。住宅の賃貸事業を所管する国土交通省の「国土交通省所管事業における障害を理由とする差別の解消の推進に関わる対応指針」によれば、「法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サー ビスや各種機会の提供を拒否すること、場所・時間等を制限すること、障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止している。」とし、「正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、財・ サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言 える場合である。 」としています。
具体的には、事業者においては、正当な理由に相当するか否かについて、安全の確保、財産の保全、事業の目的・内容・機能の維持、損害発生の防止等、障害者、事業者、第三者の権利利益等の観点を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である、としています。

今まで数年何事もなく賃借していたあなたに、あえて障害者手帳のコピーを求めたり、障がいの詳細を情報提供させることが必要といえるかどうか、全く疑問です。
先ほどの、国道交通省の対応指針には、「事業者は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。」とも記載されています。不動産会社はあなたに理由を全く説明していません。説明もしない以上、正当な理由がないものとして、そのような取扱いに応じなくていいでしょう。無理強いなどできないはずです。
障害者手帳の写しを交付しないことなどを理由に追い出すことなど、不動産会社はできないはずです。仮に追い出されそうになったら、都道府県や区市町村に、障がい者差別に関する相談窓口がありますので、ご相談に行かれてください。

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