多様な人たちが織りなす、カラフルな世界を描いた映画「ラプソディ オブ colors」

皆さん、こんばんは。Co-Co Life☆女子部 事務局&ライターのエノモト ユキです。
今回はドキュメンタリー映画「ラプソディ オブ colors」を取り上げます。

2021年5月13日(木)に東京都渋谷区で行われたメディア向け試写会に参加してきました。

●そもそもcolorsって?

この映画の舞台は、東京都大田区にある3階建てのシェアハウス。1階がイベントスペースとなっていて、3階では重度知的障がいの青年、げんちゃんが支援制度を使って、一人暮らしをしています。イベントを主催しているのが、Co-Co Life☆女子部・全国版Vol.13(2015年8月末発行)でもご紹介した「バリアフリー社会人サークル colors」。障がいの有無にかかわらず、様々な人が集まり、飲み会や寄席、占い、音楽ライブなどのイベントが行われています。

主人公は、そのcolorsの主宰者である石川悧々(いしかわ・りり)さん。脊髄損傷を患いながらも、精力的に活動しています。実はCo-Co Life☆女子部・全国版 vol.15(2016年2月末発行)の巻頭特集にも登場して頂きました。
もう一人の主役は、中村 和利(なかむら・かずとし)さん。大田区でガイドヘルパーを派遣するNPO法人 風雷社中の理事長で、歯を磨かない、いつも同じ黒いTシャツを着ているという強烈なキャラクターです。「ラプソディ オブ colors」は、そんな二人を中心に個性豊かな人々が繰り広げる人間ドラマを記録した、ドキュメンタリー映画です。ちなみに、作品中には、Co-Co Life☆女子部の誌面もちらっと登場します。どのシーンか探してみてくださいね。

バリアフリー社会人サークルcolors、げんちゃんたちがシェアハウスをしている「トランジットヤード」 の看板

●colorsに集まる人々に密着。そこから見えたものは?

石川 悧々さんと佐藤 隆之監督

この映画では、colorsのイベントに集まる人の中から3人の人物に焦点を当てています。

1人目は、じょぶりんさん。脊髄小脳変性症で車いすを使用しながら、百人一首に曲をつけています。また、小説家としても活動しています。自己破産などの辛い経験も味わってきたじょぶりんさん。それでも、明るく音楽配信やcolorsでの音楽ライブをしている様子が映し出されていました。

2人目の新井寿明(あらい・としあき)さんは、ガイドヘルパー。過去には、ゲンちゃんの担当もしていたベテランさんです。colorsのイベントでは、激しい曲に合わせてヒップホップダンスを披露します。劇中の「障がいのある人と俺とどこが違うの?」というセリフが印象に残りました。

3人目はmayumi(まゆみ)さん。脳性まひがあり、車いす生活をしています。そんな彼女は「障がい者デリヘル嬢」として活動していました。現在も、障がい者の性の問題についてメディアやSNSで発信しています。

3人に共通しているのは「何かしらの翳(かげ)」があるということ。3人それぞれ、壁にぶつかって、悩む姿も作中には描かれます。
それぞれのシーンを見て、私は、誰にでも上手くいかないことがあり、一人一人が自分と向き合っているのは、障がいの有無に関係ないと再確認しました。

この3人以外にもcolorsには魅力的な人たちが集まります。作中にcolorsで音楽ライブをしているシーンが出てくるのですが、集まっている人を見ても「誰が障がい者で誰が健常者か」なんてどうでもいいと感じさせられます。それに、映画を見ている限りでは、誰が障がい者で誰が健常者なのかよくわかりません。様々な人々が集まり、まるで7色の虹のように、カラフルで鮮やかな世界を見せてくれるのです。

佐藤監督は「従来の障がいのある人の映画では、ヘルパーと利用者が明確に分かれていた。それが僕には『障がいのある人を不自然に持ち上げる』感動ポルノのように写りました。本来ならば、友達であるべきなのに」と仰っていました。

私はこの監督の言葉を聞いて、衝撃を受けました。普段、ガイドヘルパーを利用しているのですが、どうしてもヘルパーさんとの間に壁を感じてしまうことがあるからです。そして壁があることが当たり前だと思っていたからです。しかし、colorsのイベントではヘルパーも利用者もそこには存在していません。同じ人間として同じイベントを楽しんでいるのです。

一方、石川さんは当初「これは映画にならないのではないか」と思ったそう。「colorsには、確かに様々な人が集まっています。でも、普段障がいのある人たちと接していてもその人のことを特別面白いと思わないですよね。私の中では、それが普通になってしまったので。」とのことでした。確かに、人と人の関係を築いていくときに障がいの有無って関係ないですよね。

●生きづらさを感じている人に見てほしい

石川さんと佐藤監督におすすめのシーンを聞いてみると、佐藤監督は「オープンマイク」というイベントに参加している、軽度知的障がいのしょうちゃんのシーンが印象に残っているそうです。しょうちゃんは、21時までに帰宅しなければならないのですが、イベントで歌い足りなくて泣きだしてしまいます。自分で決めたルールと今の気持ちの間で揺れ動いているしょうちゃんの葛藤が描かれている場面です。障がいの有無にかかわらず、自分の思い通りにならなくて悩むことはありますよね。それが如実に現れているシーンが監督の印象に残っているそうです。

石川さんのおすすめは、映画の最後、三浦半島の海でBBQをしているシーン。
「障がいのある人、ない人、LGBT、外国人、子どもからお年寄りまで多種多様な人たちが、一緒に飲み食いしたり、くだらない話をしているところでこの映画は終わります。それが社会の縮図ですよね。障がいのある人もLGBTの人も一緒にいて当たり前ということが伝わるシーンになっていると思います」

最後にCo-Co Life☆女子部の読者に向けてメッセージを頂きました。

石川さん「障がいがあるからとか、マイノリティーであるということに悩みを抱えている人もいるかもしれません。そんな人がこの映画を見ると、悩みがあってもそれなりに楽しいことができると分かると思います。自分は生きづらいと思っている人に見てほしいです。映画に登場する人たちのように生きていけば楽しいということが伝わると思います」

佐藤監督「この映画に出てくる人たちは、みんな魅力的です。誰かと比較して、落ち込んでしまうこともあるかもしれません。しかし、人はそれぞれなので皆さんも自信をもってほしいです」

この映画は、障がい当事者にとっても衝撃的な内容だと思います。障がいの有無にかかわらず、同じ場所に集まり、イベントを楽しんでいる人たち。まさに「インクルーシブ」な場所であり、石川さんのおっしゃる通り、社会の縮図そのものを表しています。従来の障がい者を描いた作品とは一味違う「ラプソディ オブ colors」、ぜひ観てみてはいかがでしょうか?

映画『ラプソディ オブ colors』
公開日:2021年5月29日
公開予定劇場:ポレポレ東中野(東京都・中野区)ほか全国の映画館で上映予定。
公式サイト