BEYOND GIRLSの3人と語らう…あの時あの瞬間。前編集長・元山文菜が直撃!

Co-Co Life☆女子部 元編集長の元山です。ついに、Co-Co Life☆女子部が10周年を迎えました。

これまでいろいろなことがありましたが、その中でもやはり一番大きかったのは、多様な人たちとの出会い。その中でもビヨンドガールズの3人は、語るに欠かせない存在です。

ビヨンドガールズは小澤綾子さん、中嶋涼子さん、梅津絵里さんの3人のユニット。

リーダーの小澤綾子さんが筋ジストロフィーの病気が進行して車いすに乗ることになったのがキッカケで、車いすに乗っているメンバーで結成しました。

ビヨンドガールズという名前は、「あらゆる壁を越えよう」という意味があります。実は5年前、「世間の障がいに対する常識やイメージを変えたいね!」と、私も一緒にユニット名について意見を出し合った一人。あれから、みんなだいぶ状況が変わりました。そこでこの5年間について、友人でもあるビヨンドガールズとともに座談会を行いました。

ゴールが同じだからタイプの違う3人でも融合できた

元山:綾子ちゃんは、グループ組む前から1人でも活動していたし、私の界隈では有名だったよね!? それがグループを組むってどんな感じだった?

小澤:1人で活動している時は、マイノリティとして自分の意見を発信するためにも強くなければいけないって思いがあったけど、本当は緩くなければ伝わらないことがあるのも知ったかな。

元山:なるほど。たしかに綾子ちゃんは外資系企業の社員だし、強くてハッキリしたイメージがあったな。それに対して、絵里ちゃんは楽しくやろうよって緩い感じで、その中間でアタフタしているのが涼子ちゃんというイメージ(笑)。

梅津:あはは、そうかも! 文菜ちゃんにもだけど、いつも難しい横文字使うなって思ってた。「デフォルト」とかね(笑)。

元山:タイプが違うだけに、いろいろと揉めたときもあった?

梅津:うん、めちゃくちゃケンカした。どなりあったり泣いたり……。

中嶋:こんなに人とケンカしたことないくらいケンカしたよ(笑)! でもそれも含めて青春だった。これだけ、自分をむき出しにできる関係ってないから新鮮だったなぁ。

元山:当時、綾子ちゃんは「ミッションを持って!伝えたいメッセージはなんなのか?」みたいな感じで、「伝えたいものよりも、自分たちが楽しそうにしている姿こそがみんなを元気にする」みたいな絵里ちゃんの考えで議論してたよね。その合間でアタフタする涼子ちゃんっていう(笑)。それでも、3人とも「障がい者を“かわいそう”にしない! 世の中のバリアを乗り越える」っていうゴールはいつも同じだった。タイプの違う3人でもゴールが同じだったから、少しずつ融合しているなって感じてたよ。

小澤:そうなんだよね! ゆる~く伝えたり考えたりするのも大切な方法なんだと2人から学んだ。いつでも、強く力んで主張するだけが重要ではないんだと思った瞬間から、表現の幅が広がったよ!

梅津:私も逆に、キチンと目的とか考えを持って活動をすると、より多くの人に広がるんだと知ったんだよね。自分と向き合うキッカケにもなった。どっちもあって、良いんだよね。

小澤:そうそう、どっちもあるよね! それこそ、ありきたりな言葉だけど多様性だよ。 それに、1人で活動している時と違って、ビヨンドガールズの活動は3人分で、伝わるスピードも3倍に広がるんだよ! マイノリティとして意見を強く言っていたけど、いつの間にかマジョリティになっているような感覚があったな。

Mステの階段をスロープに!?

元山:ユニット組んでから、どんどん活躍の場を広げていったよね! パラリンピックとかNHKとかAmebaとか、どんどんテレビで見る機会も増えて、チェックしまくってるよ!でも今では個々の活動が増えているよね? 今後はどうしたいとかあるの?

小澤:ちょっと、話がずれるかもしれないけれど、今日タクシーの乗車拒否されたんだよね。最近は減ってきたように思われるかもしれないけれど、やっぱり相変わらず多くて……。

涼子:あぁ……手を上げてるのに、見て見ぬふりはよくされるよね。

小澤:そうなの! 道路に前のめりになってやっとタクシーを止めたのに、運転者さんに「え!? 車いすから降りられないの!? 自分で乗り移れるんだよね?」って言われちゃって……。しまいには、「この車いす、すごい重いんだけど」って吐き捨てられて。

梅津:ひどすぎる! 電動だから重たいのは当たり前なんだけど……。やっぱりまだ知られていないんだね。

小澤:うん、でもそのとき、突然通りがかりの人が「何か手伝うことありますか」って声をかけてくれて。若い男性だったのだけど、手を貸してくれて、タクシーに乗り移るのを手伝ってくれて。本当に心が救われたよ。

元山:それはうれしいよね。東京パラリンピックもあって、世の中のバリアへの意識も変化している気がしたけど……二極化しているのかな?

小澤:そうだと思う。少しずつ受け入れてくれる人は増えていると思うけど、そうじゃない人もまだまだいるなって。だからこそ、私がやることってまだまだあるな!って思ってる。

涼子:うん、ひとまず、ゆるほぼミュージックでミュージックステーションに出るしかないね(笑)!

小澤:ホントだね! それで、あの恒例の超長い階段をスロープに変えよう(笑)!

梅津:いいね! それ画期的だよ! 見られるの、超楽しみにしてる(笑)!

メンバーが拠り所を作ってくれた

元山:涼子ちゃんは最初、動画の編集者だったよね! そう思うと数年で大きく変わったね! 今はメディアにもたくさん出ているけど、今後はどうなりたいとかあるの?

涼子:あんまり、目標を立ててコレ!って決めながらやるタイプではないから、今の活動をしっかりやりながら、それが積み重なっていったらいいなぁと思ってる。そもそも、裏方だった私が、ここまで表に出ていること自体がすごいって思ってるんだよね。それも2017年にCo-Co Life☆女子部の撮影で絵里と綾子に出会って、障がい者だってオシャレ出来るんだとか、障がい者だって仕事バリバリできるんだ!って影響を受けたおかげ。それから自分の意思を人前で発信したいと思うようになったんだ。

小澤:しかも、今のYouTubeでは元々の編集者の経験を活かせているし、人生って繋がっているんだよね!

涼子:うん、いつの間にか色々なことが積み重なって形になってるね。今後も目の前のことを頑張りたいな。

元山:絵里ちゃんは何か目標とかあったりする?

梅津:長生きだね!(即答)ほら、私って何回も生死をさまよっているからさ。

元山:うん……。この数年で手術をしたり、そこからまた意識を失って集中治療室に入ったりっていう様子はずっと見ていたよ。

小澤:いやぁ、あの時は心配したよ……! 元気になって本当によかった。

梅津:みんなからもらった沢山のメッセージですごく勇気が湧いたし、いつも本当にありがとう!って思ってる。だからこそ、長生きしてみんなに元気な姿を見せていたいんだよね。もう伝えるものなんて何もないの! 生死をさまよいながらも、楽しく生きている私を見てっていう、それしかないかなぁ。

元山:だからなのかな!? 私もすごくしんどい時に、絵里ちゃんの病院からの笑顔に本当に何回も何回も救われた! たまに、淡々と料理している絵里ちゃんのインスタライブをぼーっと見ていたりするよ(笑)。

梅津:えー本当? ありがとう(笑)! あとは今も、障がいのある女性達が集まって交流をする大人女子会も続けていて、最初は孤立している当事者の人たちの拠り所になればと思って始めた活動だけど、自分が手術や入院で意識を失っていたときにも、メンバーがずっと活動を続けてくれていたの。いつの間にか、自分にとっても拠り所になってたんだよね。

涼子:うん、絵里は戻ってこられるって信じてたからね。

元山:素敵! ぜひ、Co-Co Life☆女子部ともコラボとかしたいね!

梅津:いいね! いつの間にか応援してくれる人がどんどん増えて、たくさんの当事者の拠り所にしたい。そして誰よりも「生きる」を楽しんでいる私の姿を見てもらうことで、誰かの力になれたら良いって思っています!


ビヨンドガールズの名前を発表した5年前。

ビヨンドガールズデビュー戦。たくさんの人が応援に来てくれました

座談会を終えて ―元山文菜の総評―

印象的だったのが、どんな質問にもサクサク応えてくれた3人が「次の10年って目標あるの?」って質問に全員が「うーーーん」と天を仰いだこと。

これは「10年後も元気で健康なままでいられるのを前提」とした質問。10周年企画だからと、すごく軽率な質問をした自分が恥ずかしくなりました。

私自身、10年後も今と同じように元気に歩き回れているとは限りません。障がいが進行する可能性は十分あります。そして、これは障がいの有無に限っての話ではありません。今が永遠に続くことは誰にとってもありえない。そんな当たり前に気づかされました。

思えば10年前……。娘を出産して障がいが進行し、とにかく痛さと不安が私の感情にとぐろを巻く日々でした。

子どもを抱きかかえられない私と泣きわめく新生児の生活。夫がいないと外にも出られない私たちは、昼間1LDKの部屋に閉じ込められたような時間を過ごしていました。そんな中、私は会社員以外の自分の可能性を考えていました。

「障がい ファッション」「障がい 美容」の検索ワードで出てきたのが、Co-Co Life☆女子部。それから少しずつライターとして参加し、編集長になり、団体の運営にも関わるようになりました。

今、10歳になった娘の成長を見ながら、改めてこの10年間の変化に驚きます。10年前の自分には想像できなかったことばかりで、たしかに今から10年後なんて、誰にも予想はできないですね!

過去を悔やむでもなく、未来を恐れるでもなく、「いまこの時」に集中して生きるビヨンドガールズの3人に、エネルギーをもらったし、励まされました。

ただ思いっきり「生きる」。 そんな3人だからこそ、これだけの影響力を与えられるのですね! 私も気楽に今を楽しみます。

●小澤綾子(おざわ・あやこ)
39歳、筋ジストロフィー。BEYOND GIRLSリーダー。外資系IT企業に勤めるかたわら歌や講演の活動を通じ、病気や障がいについて発信。大阪・関⻄万博の応援大ソングを歌う「ゆるミュージックほぼオールスターズ」のメンバーとしても活動中。Twitter  @kozakozakozani

●中嶋涼子(なかじま・りょうこ)
35歳、横断性脊髄炎。9歳で下半身付随になり、車いすユーザーに。米国留学後、通訳、映像エディターを経て、2018年より車いすインフルエンサー、俳優に転身。YouTube『中嶋涼子の車椅子ですがなにか!? -Life onWheels-』は登録者数1.7万人! Twitter  @NakashimaMinion

●梅津絵里(うめつ・えり)
44歳・全身性エリトマトーデス。6年間の寝たきり生活を経て車いすに。2020年に腰の病気が悪化。持病が再燃し一時意識不明となったが、5回のオペを乗り越え現在自宅療養中。障がい、病気の大人のコミュニティ「オトジョ会」を運営。Twitter @umeerin

Vol.40 「あの人の今」ビヨンドガールズの記事はこちら!
ビヨンドガールズの出会いとなった、Co-Co Life☆女子部Vol.22はこちらから読めます。