”あの人”の今♯2 長谷川勇基さん

この記事は2022年2月28日発行の季刊誌「Co-Co Life☆女子部 vol.39」をWeb用にリメイクしています。掲載している情報は誌面発行当時のものとなります。

平常心と有言実行で夢を現実に
想いは次のフランス大会へ

 本誌には何度も登場し、そのクールなスタイルで読者からも人気を博している、車いすラグビー選手の長谷川勇基さん。2020東京パラリンピックにチーム出場を果たし、みごと銅メダルを獲得! 有言実行のスタイルと、静かな中に燃える闘志について、じっくりお話をお伺いしてきました。

衝撃だった! 「男子部」特集で初の雑誌モデル体験

長谷川勇基(ゆうき)さん
(29歳・頸髄損傷による四肢まひ)
1992年10月5日生まれ、広島市出身。
車いすラグビー選手。17歳のとき頸
髄を損傷。2021年東京パラリンピッ
クに初出場し、銅メダルを獲得。チー
ム内では障がいのクラスが最も重い
選手の1人で、守備の要として活躍。
Twitter    @yuki_blitz2
Instagram @yuki_blitz2

 確かツイッターで声をかけられたと思います。大学を卒業してフリーの期間だったので、やってみようかな、と気楽な感じで受けました。断る理由もなかったし。

撮影の日に、初のメイクで首のホクロを消されたのは衝撃でしたね。小さい頃から水球をやっていたので、シミやホクロがいっぱいあるんです。

ファンデーションかなにかを塗られて、ああ、そういうことをする世界に来たんだって思いました(笑)。

「自分もパラでメダルを取りたい」
リオのメダルを手にして変わった

 競技はリハビリのつもりで始めて、最初は趣味でやっているレベルでした。

意識がガラッと変わったのは、チームの仲間が2016年リオパラリンピック大会のメダルを持って帰ってから。メダルを首にかけて写真を撮っていいよと言われたけれど、「いや、自分で取るまでは絶対に下げないぞ」って決めたんです。

この時、本気で東京パラの出場を目標に決めました。

実際に出場してみて、感じたこと。
「選手村は理想の街」

 東京パラ大会の直前、運営からSNSの確認が入り、個人でやっていたツイッターに公式マークがつきました。いきなりフォロワーがすごく増えてびっくりしましたね。皆さんからの応援の声も届いてました。

 選手村では、いろんなタイプの車いすが混在しているし、目が見えない人、耳が聞こえない人もいるし。いろいろな国の人がいて、全然なに喋ってるのかわからないし。食堂なんかもう、カオスです。

それなのに、誰もぶつかったりしないんですよ。障がい者のプロフェッショナルというか、危機察知能力が高いんですかね。バリアフリーがすごくて、会場設備がいいのもあると思うんですけど、理想的な街という感じでした。感動しましたね。

メダルは天下の回り物。パラ出場で人生は変わる?

 メダルは、いろんな人が触ったり首にかけたりしたので、もうボロボロです。小学校に講演に行くと、子どもたちは首にかけるわ振り回すわで、もみくちゃにされました。

でも、リオに出た人たちの時もすごいことになっていたので。メダルって、みんなに触って首にかけてもらうものなんだと思っています。

あと「メダルを取ったら人生変わるよ」「メディア露出も増えるし、大会で声をかけられたりする」と言われていたんですが、うーん、変わらないですね。いつも通りの生活です。そもそもコロナで外に出られないし。

 家族には喜んでもらえたので、ケガをしたことの恩返しができたかなと思っています。ひとりで生活して、契約も決まって稼いでいるし。ひと安心したんじゃないでしょうか。

おしゃれへのこだわりと、派手な髪色の秘密

大学在学中に知り合った友だちが美容師をやっていて、月に1回、髪を染めてもらいに行っています。色はお任せで、友だちのセンスに預けていて。

派手な髪色が多いのは、親戚や祖父母がテレビで試合を観たときに「パッと見つけやすいかな」と思って始めたんですよ。でも今年30歳になるので、そろそろ大人にならないといけないかな。

 靴や洋服も大好きで、スニーカーのコレクションは50足ぐらいになりました。競技の技術を磨きつつ、見た目にもこだわっていきたいですね。

長谷川勇基年表

1992年
広島市にて誕生

2005年~2007年
中学生で水球の全国大会に出場

2010
17歳の時、泳ぎに行った海の砂浜で転倒し、脊髄損傷。車いすに

2011年
広島の高校を卒業
リハビリの過程で車いすラグビーと出会う

2012年
立正大学(埼玉・熊谷)社会福祉学部に入学
自動車の運転免許を取得

2013年
車を購入
クラブチーム「BLITZ(ブリッツ)」に所属
2020年東京パラ開催が決定

2013年
大学卒業、国立障害者リハビリセンターで職業訓練を受講
ブラジル・リオパラリンピック開催
本誌vol.16表紙と巻頭に出演し、誌面で「東京パラを目指す」と宣言

2017年
フランス企業のソシエテ・ジェネラル証券とアスリート契約

2018年
全日本代表に選出、vol.23 Co-Co Lifeタレント部の立ち上げに参加
「BLITZ」でキャプテンに就任(〜継続中)
vol.28 障がい男子の恋愛あるある座談会に出演

2020年
東京パラリンピック、コロナ禍で異例の延期

2021年
東京パラリンピック出場、銅メダル

長谷川選手は前列右から4番目。金髪で出場。
ⒸMegumi Masuda/World Wheelchair Rugby

撮影:加藤千絵 デザイン:宮本宏美 取材・文:和久井香菜子 取材協力:一般社団法人 日本車いすラグビー連盟 編集:守山菜穂子