「ユニセフハウス」で世界の子どもたちに会いに行く  無料ツアーで社会情勢の今を知ろう

東京都港区にあるユニセフハウス。今回は読者モデルの竹内ひなさん(23)と、2022年にリニューアルオープンした日本ユニセフ協会の展示施設へ行ってきました。ツアーに参加した模様を紹介します!

今回のモデル

竹内ひなさん(東京女子大学 社会学部4年・先天性ミオパチー)

いざ、ユニセフハウスへ

品川駅から坂を上がって、閑静な住宅街の中に現れるユニセフハウス。毎月平日と第2・第4土曜日は無料で来館ができます。

自分のペースで自由に見学ができますが、初心者の方にはガイドツアー(予約制・無料)がおすすめ。展示の意図や世界の子どもたちの今を詳しく話してもらえるガイドさんの解説があります。また、お手持ちのスマホとイヤホンでの音声ガイドも利用可能。音声ガイドは「ONE PIECE RED」でウタ役の声優 名塚佳織さんの声を聞きながら鑑賞ができます。

今回は取材をするにあたり、20年ほどユニセフハウスでガイドする手島和子さんに案内していただきました。

展示は3つのゾーンに分かれ、1階と2階で見学できます。まずは、1階からスタート。柔らかな口調で手島さんのガイドが始まりました。


ZONE1 「ちがい」の中の「おなじ」と出会う

ユニセフハウスの玄関から右方向に目を移すと、ゾーン1のコーナーが広がって見えます。巨大スクリーンには世界の子どもたちの笑顔や遊んでいる姿が次々と映し出されました。ここでは、人は誰しも「うまれる」、「たべる」、「あそぶ」、「まなぶ」を通して大人になっていくこと。

どの国で暮らしても、子どもにとって大切なことは変わらないことを遊び感覚で認識できます。

ゾーン1は子どもたちが元気に動けるほどの広い空間。取材日は貸し切りだったため、竹内さんはゆっくり堪能していました。「まなぶ」のコーナーでは世界中の子どもたちが通う学校の通学路が映り「え!こんな道を歩いて通っているの?」と驚くような映像もありました。

スクリーンからいろんな国の日常風景が映り、多様な暮らしを感じられます。日本のようにきれいに舗装された道路を通学できる国は想像より少ないのかもしれません。

手島さんから「では、エレベーターに乗ってゾーン2へ行きましょう」と誘導され、竹内さんは2階へ上がりました。


ZONE2 7人の子どもたちと出会う

ゾーン2は系統が変わり、ゾーン1での楽しいカラフルな雰囲気から一気にダークな色合いの展示室に。それもそのはず、過酷な生活を強いられる7人の子どもたちに会いに行くからです。

竹内さんはアーシャさんという女の子の生活に衝撃を受けました。早朝からラクダを連れて半日歩き、水くみに行かされる動画が流れました。女の子という理由で学校に通えずに兄弟から勉強を教わっているとか。日本ではとても考えられません。

展示室では実際に、子どもや女性が運ぶ水瓶が置いてあります。中をのぞくと水が入っていました。竹内さんは「私には重くて持てないですね」と、じっと水瓶を見つめていました。アーシャさんのように、世界の子どもの約10人に1人が働かされている現実があります。

紛争、児童婚、児童労働など困難な状況に立たされる子どもたちに手を差し伸べるユニセフですが、まだまだ支援が必要です。世界の課題に向き合いながらさまざまな子どもたちの生き様を知ります。

次に紛争するシリアにいながら、義足で学校に通うサジャさんに出会いました。ここでは紛争地域にある教室をイメージした部屋で動画を見ることができます。教室の窓からはかつて、優雅だったシリアの街並みと現在の悲劇な惨状が交互に窓に映ります。

手島さんは「彼女は兄弟も足も失ったけど、学校には行きたい。そういう意欲のある子が世界にはいるんですね」と話していました。

ゾーン2では7人の子どもたちに出会う中で、実際の労働で作るアルミのボールや、少年兵が持つ銃のレプリカなどは触るとゴトッと音がしました。触れてみることで、現地の子どもたちに思いが寄せられる体験型の展示はインパクトの連続。

展示室の仕掛けを体験しながら、一つ一つの展示を真剣に見つめる竹内さん。車いすに乗ったまま、パネルに近付いて見るのぞき穴の動画は「もう少し低い方が見やすいかも」ということでした。

また、映像やデータからわかる知識だけでなく、実際に現地の保健センターを再現したブースでは子どもたちに配るバターピーナツ風味の栄養食品や母子手帳などが置いてあります。

竹内さんが時間をかけて見たのはユニセフのソリューション。気になるパネルをくるりと回すとユニセフの活動内容が書かれています。中でも、パラオで障がいのある子どもたちが健常者の子どもたちと共に教育が受けられるようになったというパネルに興味を持っていました。

2階の展示物を全て見終わり、最後はゾーン3を見るために1階へ降りました。


ZONE3 ユニセフと出会う

最後はユニセフの歴史を振り返りながら、活動の基盤である「子どもの権利条約」やSDGs(持続可能な開発目標)について学べるコーナーへ移動しました。

子どもの権利条約では40条のパネルを自由に手に取り、スクリーンの前に置くと「大切にしたい権利はどれ?」とゾーン2で出会った7人の子どもたちが登場し、彼らの守るべき権利が表示されました。

竹内さんは第23条「障がいのある子ども」の権利を真っ先に選びました。そこには「尊厳が守られること、自立して社会参加しながら生活ができること。教育や訓練、保険サービスを受けられる権利」と書いてありました。

ガイドツアーは1時間半に及ぶ長丁場でしたが竹内さんは多くのことを学んだ様子でした。今回の締めくくりに、今世界のすべての子どもたちに何が必要なのか書き残してもらいました。

竹内さんだけでなく、これまで来場者が書いた言葉はユニセフハウスに展示されます。すべての子どもたちに向けて竹内さんは「知識と生活への希望」と書きました。

来年の3月で大学を卒業し就職も決まった竹内さん。今は卒論も書く時期になり「障がい者の自立」をテーマにしようか考えていると話していました。今回のユニセフハウスでの体験はどうだったのか感想を聞きました。


ツアーを終えて 「もっと若い人に見てもらいたい展示だと思います」

竹内さん:今回はとても勉強になりました。子どもが生きる上で体験する学びや遊びは当たり前ではないことを知り、展示の内容も1階と2階ではだいぶ違った展開で一人の子どもに深く焦点を当てた内容に興味を持てました。実際に子どもたちが労働をして作っている物や、銃のレプリカなどを手にすることで、現地に思いを寄せられたのは大きな体験でした。私が7人の子どもたちの中でも印象に残るのはアーシャさんの水くみ仕事。食事もろくに取れないまま働く姿は衝撃的で、もう少し改善できないのかと思いました。また、私と同じように障がいのある子たちにフォーカスが当てられていることや、どんな環境にいても夢を持っている姿勢が心に残っています。大学のゼミなどで、もっと若い人たちが見学するといいのではないかと感じました。車いすでも問題なく見学できます。ありがとうございました。


《バリアフリー情報》

2024年11月現在

ユニセフハウス1階

アクセス

JR・京浜急行「品川駅」徒歩7分 車椅子10分ほど
都営浅草線「高輪台駅」徒歩7分

車の方は 駐車場有

今回の取材では、品川駅西口より道なりに進み、坂を上がってロイヤルホストの前を通過しホテル街を通って、品川東武ホテルの手前で左に曲がるとユニセフハウスが見えます。

開館時間:10:00〜17:00

ユニセフハウスの詳細は

https://unicefhouse.jp

動画でも見られるユニセフハウス 取材の様子を公開中!

撮影:鈴木智哉 取材・文:飯塚まりな 動画:扇 強太