皆さんには”推し”はいますか? 尊いあの人やキャラに会うために、ライブやグッズ集め、聖地巡礼など、日々楽しんでいる方も多いはず。
そんな楽しい「推し活」ですが、障がいによる特性によって、困ったり、工夫が必要になったりする場面もあります。
そこで今回は自身の推し活について語る座談会を実施。4人の参加者が感じる「推しの魅力」から「推し活での工夫」「ちょっと困った経験」まで、リアルな体験を語り合いました。
★今回参加したメンバーはこちら

月岡 凜さん(25歳 脳性まひ)
約2年前に、ショート動画のSNSで一目惚れしたヴィジュアル系バンドの「KAKUMAY(革命)」のメンバーを推し中。小学校くらいからヴィジュアル系が好き。当日はライブに行く時の「参戦服」で参加!

金澤 弘美さん(55歳 脳出血による右半身まひ)
推しは、2.5次元舞台『刀剣乱舞』の蜻蛉切役であるspiさん。さらに、ヴィジュアル系バンド「0.1グラムの誤算」も箱推し中。娘さんと親子で推し活をしている。

河元 希さん(41歳 軟骨異栄養症・低身長)
歌やダンスの上手さ、人柄、エンターテインメント性に惹かれ、Snow Manの宮館涼太さん推しに。当日はダテ様のカラーである「赤」のニットとライブパーカーでコーディネート♡ 以前はトニセン(20th Century)やK-Popを推していた時期も。

築地 昌美さん(40歳 視覚障がい)
昨年から鍼灸師を目指して大学に進学中。マイケルジャクソンと『ちいかわ』のうさぎ推し。全盲の夫と2人暮らしで、夫もちいかわ好き。
クッション、うちわ…推し活を楽しむための工夫アイテム
Co-Co Life☆女子部スタッフ(以下Coスタッフ) 今日は皆さんに推し活グッズを持ってきていただいていますが、普段の推し活はどのようにされているんですか?
凜さん 私は主に週1ペースでライブに通っています。実は、昨日車いすのホイールにバンドの公式サイトに飛ぶQRコードを貼ったんです。宣伝カーになろうと思って(笑)。

弘美さん うわー!すごくいいと思う!
凜さん 今度サイン会があるので、サインも書いてもらいます(笑)。チェキも600枚くらいファイリングしてますよ。CDは1枚買うと6ショットチェキが撮れるんで、いっぱい買ってます!

昌美さん すごっ!これ絶対うれしいよね。
凜さん こういうの見てるだけで幸せなんですよね~♡
希さん わかる!推しについて見たり語ったりするのって幸せですよね。私もこれから渋谷にグッズを買いに行こうと思ってます。
Coスタッフ 希さんもグッズを集めているんですか?
希さん はい、グッズも発売されるたびに買っていますし、コンサートにも行きます。ただ、人気があるからファンクラブに入っていてもなかなかチケットが取れないんです。でも、幸い今年の1月に開催されたコンサートが取れて、初めて行ってきました!

昌美さん すごい!幸運!
希さん あと、Snow Manは毎週動画配信をしていて、そこで使っていたレストランに友達と一緒に行きますね。
凜さん わかる!聖地巡礼!私もSNSのストーリーにアップされていたお店に行ったりするよ。推しが座った場所に座りたい!
希さん そういうのありますよね(笑)。私も同じメニューを頼んだりして、店員さんに動画見てこられました?って聞かれたことあります(笑)。
Coスタッフ 推しと同じものが食べられるっていいですよね!弘美さんはどんな推し活をしていますか?
弘美さん 私もヴィジュアル系バンドのライブと、『刀剣乱舞』の2.5次元の舞台鑑賞ですね。推しをスマホの待ち受けにしています。15歳くらいの時からヴィジュアル系バンドが好きで、娘も小さい頃から私の英才教育を受けているので、今も一緒に推しを追いかけてます(笑)。
2.5次元の舞台では、「お願い5秒見つめて」って書いたうちわを持っていると、ファンサ(ファンサービス)で本当に目の前でジーッと見てくれるんですよ!車いすだと認識してくれやすいのかも。

昌美さん いいなぁ。楽しいですよね!
弘美さん 視覚障がいの方もライブに行かれるんですか?
昌美さん はい、むしろ音を楽しめるライブだから行きます!推しと同じ空気が吸えるし(笑)!
凜さん それわかる(笑)! 昌美さんはどのくらい見えるんですか?
昌美さん 目の前で指を出されて「これ何本ですか?」って聞かれたらなんとなくわかるくらいですね。
Coスタッフ 昌美さんはちいかわとマイケルジャクソンの推し活はどうしているんですか?
昌美さん ちいかわは、最初全然興味がなかったんです。ある時、全盲の夫がちいかわのアニメが流れた時に「今誰が出ていて、あの子たちは何をしてるの?」って聞いてきて。ちいかわって、ハチワレくん以外は話さないから、音だけじゃわからないんだって気づいたんです。それから夫にちいかわの話を説明するために全部見直して、ちいかわについて調べたり、考察の動画を見たりしてるうちにどんどん面白くなってきて(笑)。
弘美さん 愛だな~!
昌美さん それで東京駅にあるちいかわらんどにいってウサギを触った時に、夫が「可愛い!」って喜んだんです。視覚障がい者にとって、触れられるってすごく大事で。そこからグッズも集め始めて、あっという間にちいかわだらけになりました(笑)。今は大学の勉強がしんどい時の心の拠り所になっています。

弘美さん じゃあご夫婦で推してるんですね!
昌美さん そうですね。で、マイケルジャクソンは、もともと親が好きでずっとマイケルを聞いていて、子どものころから好きでした。昨年、大学での鍼灸師の勉強で、病気について学ぶ時に、マイケルがかかっていた病が出てきたんです。それから筋肉の動きをマイケルの身体の使い方から覚えるとか、好きなことと組み合わせて学ぶようになって、改めてマイケルのことが気になるようになりました。カッコよく踊る姿も好きだけど、子どもと遊びながら川に落ちちゃうみたいな、ゆるいマイケルの動画がかわいくてよく観てます(笑)。
凜さん へぇ~!調べていくうちに好きになるパターンが多いんですね!
推しを観るための座席問題は切実!推し活で困っていること
Coスタッフ では、推し活をしていて困ったことを教えてください。
凜さん ライブのために、地方からほぼ週1で高速バスに乗って、東京に行っています。車いすをバスのトランクに積んでもらって歩いて乗ってますが、バス会社に事前に連絡するのが大変ですね。
あと、皆さんに聞きたかったんですが、ライブの時って普通の座席で観てます?
希さん Snow Manが所属する事務所「STARTO ENTERTAINMENT」のコンサートは、着席指定っていう席があるんです。私の場合、そこで座って観ています。ただ、チケット買う段階で着席指定を希望することになるので、低身長だと立って参加するアリーナ席に行くことができないんです。友達が「アリーナ最前に行けた!」って言っているのを聞くと、ちょっとうらやましいなって思います。
弘美さん そうか、チケット買う時から着席指定とか車いす席って決められるってことだね。
凜さん 選択肢があるんだ、すごい!私が行くヴィジュアル系バンドのライブでは、チケットは先着順。早い番号が取れたら前の方の端で見せてもらえるように事前に許可をもらって見るんですけど、それが周囲からは”特別扱い”に見えるようで、恨まれやすいのが気になります。そこがすごく悩みどころですね…。
別のバンドですが、一桁台の座席を引いても「危ない」って言われて一番後ろで見ることもあって、その時はめちゃめちゃ悔しくて号泣しました。

弘美さん わかります。2.5次元舞台のチケットの取り方も、事前に車いす席を取れるわけじゃなくて、一般と同じ条件で取ってから電話をして車いす席にチェンジするんです。だから、いわゆる”神席”が当たっても、自力で座れないところだと交換しないといけない。結局交換した席が1階席の一番後ろとかだと、すっごくモヤモヤしちゃって。でも押し通すのは”わがまま”と紙一重な気がして、なかなかね…。
凜さん わがままって言われがちだよね。みんなと同じ条件でチケット取っているのに、わがままって言われるのは違うかなって思っちゃう。
希さん そう、着席指定の中でも席の良し悪しがあって、今回私はよく見える席だったんです。だからそれで「アリーナに行きたい」って思うのはちょっとわがままなのかなって思うこともあります。でも、銀テ※だけでなくいろんな落下物を取れるアリーナが、やっぱりうらやましいですよね…。
※銀テープの略。コンサートの演出で客席に大量に発射される、メタリックな銀色の細長いテープのこと
弘美さん そうそう、会場によっては車いす席がすごくいい席なこともあるんですよね。一度だけちょうど前方の通路のあたりに座れたことがあったんです。その時は目の前に下りてきてくれて、ファンサもしてもらえてすごくうれしかったんですけど、同じ推しの人の「車いすだからって前に来れてズルい」っていう書き込みがあって、ちょっと嫌な気持ちになりましたね。
凜さん そう、私も車いす席がステージにすごく近いことがあって、ピックをもらったら「車いすだからって調子に乗るな」とか「障がい者のフリをしているんじゃないか」とまでSNSに書かれたんです。車いすって目立つから推しに覚えてもらいやすいっていういい点もあるけど、そうやって言われちゃうのも悪い意味で目立つからなんですよね…。
弘美さん でも私たちも覚えられるくらい推しのイベント行ってるからね。特別扱いされているわけじゃない。
昌美さん 障がいがあるかどうかじゃないよね。
凜さん あと、ライブハウスにバリアフリーのトイレがなかなかないから、ライブの前にトイレを探すのが大変!事前にトイレの場所を探して、済ましておかないと。トイレを気にしながら行かなきゃいけないのもちょっと大変。

昌美さん 私たちは、もはやライブ会場の入り口はどこかなってうろうろ歩き回ってる(笑)。でも「スタッフいないかな」とか声に出してると、最近は周りの人が「何かお手伝いすることありませんか」って聞いてくれるようになりました。
帰りもスタッフの方が席まで迎えに来てくれて、会場から最寄り駅までも一緒に行ってくれたり、コンサートに来ていたお客さんが「駅まで一緒に行きませんか」って言ってくれたりして、わりと不安がないんですよね。
弘美さん 私も、去年のコンサートで全盲の方と出会って、帰りに娘と私の車いすにつかまって電車ごっこみたいにゆっくり駅まで行きましたよ。
昌美さん 昔は事前に電話しなきゃいけなかったんです。でもいきなり行ってたどり着けるかなって今もドキドキはしますけどね。
Coスタッフ コンサートには不安がないということでしたが、他に視覚障がいでの推し活の困り事ってありますか?
昌美さん そうですね、去年池袋にできたちいかわパークに行ってみたいんだけど、見て楽しむ場所に全盲の夫とほぼ全盲の私が2人で行くのはちょっと厳しいかな。私が全部の状況を説明して、しかも移動までカバーできる自信がないので…。でもヘルパーさんをつけちゃうとデートにならないし、お金もかかると思うと結局行けないんです。
凜さん たしかに、私は行ったことあるけど、触れないものがほとんどで、車いすの導線が変わった感じだったから、2人で行っても楽しみにくいかもしれないね。私見えてるし説明できるから一緒に行けるかも?
昌美さん 私たちはうれしいけど、受け入れる側がびっくりするかもね!(笑)
弘美さん たぶん、ライブでもテーマパークでも、健常者でもぶつかってケガをしちゃうとかあるから、安全っていう意味でなかなか難しいのかも。
凜さん でも、ケガするかもしれないとか「かもしれない」っていうのが多い気がします。
仕方ないことも多いけど…どうなったらうれしい?理想の推し活!
Coスタッフ 皆さんのさまざまな困り事について、どうなったらもっと推し活が楽しくなると思いますか?
凜さん 私が行くライブの場合、車いす席がないから事前に電話する必要があるんです。でも、しなくても気軽に行けるようになってほしいってめっちゃ思います。
弘美さん 2.5次元の舞台も、STARTO ENTERTAINMENTさんのグループみたいに、最初から車いす席で申し込めるといいなと思います。神席なのに座れないってジレンマを経験するくらいなら、最初から車いす席で取っておけば見られる場所がわかっているから悔やむこともないですよね。

希さん たしかに、確実に見られる着席指定を選ぶか、自分が見られない覚悟を持ってアリーナを狙って一般席にするかっていう選択肢を与えてくれるってありがたいんだなって今日話して気づきました。
昌美さん うんうん。以前ライブに行った時、スタッフさんが「普通席と障がい者専用席どちらがいいですか」って聞いてくれたことがあったんです。やはり自分の席は自分で決めたいですよね。
希さん そうですね。アリーナに行きたいっていう気持ちはありますが、今までたくさんの先人たちの声を聞いてきた上で、何万人っていうファンをできる限り平等にするためには、この方法がベターなのかなって思います。
凜さん たしかに、声を上げてきた人がいるから対応ができるんですよね。私も車いすだからって何度も入場拒否されて、障害者差別解消法の相談窓口に相談して間に入ってもらって、結果そのライブハウスは車いすでも入れるようになりました。
自主的にSNSでライブハウスのバリアフリー情報を載せていて、行動するって大事だなと思います。
弘美さん うちの娘もライブハウスに行くとエレベーターが使えるか調べてくれて、やるじゃん!って思ってます(笑)。

弘美さん 私は中途障がいなので、47年間は当たり前のように座席に文句ばかり言っていたけど、今車いすになって席の選択ができなくなって、初めてそのつらさを知りました。一度、2階席の最前列で手すりがあったから車いすを降りて自力で席まで歩いて座れたことがあったんですが、久しぶりに自分が取った席で見られてうれしかったし、2階席でも全然神席でした。
今、不満はいっぱいあるけど、たまに障がい者席が神席な時もあるし、顔を覚えてくれてファンサしてもらえるし、それを考えるとトントンかな、と思う時もありますね。
凜さん わかる、みんなと同じ席に座れるってうれしいですよね!
希さん たしかに、私もアリーナ席の闘いを楽しめないことも寂しいって思う時があります。同じ土台に乗れるってうれしいことですよね。
座談会を終えて…これからの推し活、どう変わる?
Coスタッフ 今回座談会をしてみて、今後の推し活にどんな変化がありそうですか?
凜さん 車いすだからって周りからいろいろ言われたのがすごく悩みだったのですが、みんなの話を聞いて、どこの界隈でもあるんだと知ることができたし、これから何か言われても強く生きていけそうです(笑)。

凜さん あと、バリアフリー情報ってやっぱり必要なんだなとわかったので、これからももっとアップしていこうと思います!
弘美さん うん、障がいの有無関係なく、みんな知りたがってると思いますよ!推し活の会場に、車いすや白杖を持っている方などが日々多くなっているなと感じます。

弘美さん 先日、たまたま車いすの方に「SNSに上がっていた動画を見て行ってみようと思い、親に連れて来てもらいました」と声をかけられたことがありました。やはり動画で会場への行き方や席の雰囲気がわかると、出かける勇気につながりますよね。これからも、楽しかった!という報告と合わせてバリアフリー状況も発信して、これから行こうか悩んでいる方の背中を押したいと思います。
昌美さん 私は推しがキャラクターっていうこともあって、テーマパークに行けないなとか思っていましたが、今対応できる範囲で推していこうかなと思います。
今、大学でちいかわのウサギがついている物は全部私の物って認識になっていて、落とし物をしても全部返ってくるようになりました(笑)。これからもウサギグッズを集めます(笑)。

希さん 私が初めて行ったコンサートはトニセンだったんですが、当時は隙間から顔をのぞかせて観ていました。その時から、わがままだとわかっていても、いつかは「アリーナ最前列取れた!」って言える自分になれたらいいなって思ってたんです。でも、現在の着席指定の席を選ぶ形は、今までのたくさんのファンの声を聞いた上でできたのかと思うと、そこはやはり感謝しかないなって今回改めて思いました。
これからも感謝をしながら、引き続きダテ様をめっちゃ推していきたいなと思います!(笑)
座席の問題やバリアフリーの不足など、まだ課題はたくさんありますが、情報を発信し続けることで、次の誰かの「一歩」を変えていくはず。
推しを想う熱量に、壁はありません。これからも自分らしいスタイルで「推し活」を全力で楽しんでいきましょう!

写真:鈴木智哉 ファシリテーター・文:関 由佳