こんにちは、副編集長の関です。
ある会社が障がい者就労支援プロジェクトを立ち上げるというニュースを聞き、2022年3月16日に記者会見へと足を運びました。
その「ある会社」とは……
「TENGA」!!
てんが、って何?という方もいらっしゃるかと思いますので、まずはそこからご説明しますと、正式な会社名は「株式会社TENGA」で、販売している主力商品も「TENGA」というネーミングです。
TENGAという商品は、男性がマスターベーションをするときに使う性具のこと。
ちなみに、女性向けの性具に「iroha(イロハ)」という商品もあります。
そんな性のための商品を作って販売している会社がどういう経緯で、またどんな形で障がい者就労支援をすることになったのか……とても気になったので、取材に行ってきました。
(以下、会社名と商品名ともにTENGAで統一します)
モノづくりと収入を得られる喜びを実感してほしい
取材会場は埼玉県の川越市。西武新宿線の南大塚駅から車で10分ほどの場所にあります。
ここは何かというと、TENGAが立ち上げた就労継続支援B型事業所と隣接したカフェ。
そう、ここは障がい者が働く場所なのです。
今回、TENGAが立ち上げた障がい者就労支援プロジェクトは、その名も「able! project(エイブル プロジェクト)」。
TENGAのビジョンである「性を表通りに誰もが楽しめるものに変えていく」という考えのもと、同社は”障がい者の性”についても積極的に取り組んできました。
握力のない人やうまく手を使えない人でもTENGAやirohaを使えるよう、補助具の「カフ」を提供するなど、誰もが自分の意思で性を楽しめるよう、向き合っています。
カフの詳細についてはこちら
そんな取り組みを進めていくうちに、「障がい者の働く環境」についても課題があることを知った、社長の松本光一さん。
確かに、重度の障がいがあると、働く場所を探すこと自体が大変ですし、できることも限られます。しかも十分な対価を得にくい現実もあり、障がい者の就労の課題は『Co-Co Life☆女子部』でも何度も取り上げています。
松本さんはそんな問題について、「障がいのあるなしに関わらず、誰もが『働く喜び』を感じられる世の中にしていきたい。自分たちにできる方法で、より良い変化を起こしたい」と考えたそうです。
そして今回の「able! project」は誕生しました。
「able! project」の拠点となるのが、冒頭でご紹介した就労継続支援B型事業所の「able! FACTORY(エイブル ファクトリー)」です。ここでは、モノづくりの技術を学びながら働き、工賃を得られます。
だいたい、就労継続支援B型事業所の全国平均工賃は1か月約1万5000円。ところが、「able! FACTORY」は1か月なんと5万円(1日5時間、月に20日作業した場合)!
確かに、これなら対価をもらえる実感を得られそうですよね。
TENGAはモノづくりの会社です。その経験から「自分が頑張って覚えた技術でモノを作ることのうれしさ、できたときの喜びを感じてほしい。そして、思いを込めたモノづくりから収入を得て『できる!』の喜びを感じてほしい」と言う松本さん。
「able」というプロジェクト名も、この発想から名付けたそう。
「able! FACTORY」では、Tシャツ作りやパソコンのリペア、TENGAのシュリンクフィルム包装作業、そして通販サイト「able! STORE」の運営が主な作業。
いくつかの工場(こうば)があり、当日は実際にTシャツにシルクスクリーンを使ってプリントする様子を見せてくれました。
TENGAを作れる!?ここにしかない限定TENGA
私が特に驚いたのは、TENGAのシュリンクフィルム包装作業。松本さん自ら、真っ白なTENGAにフィルムを巻き、企業秘密の機械に通すと、あら不思議!
綺麗にフィルムがフィットし、あのTENGAの美しいフォルムで出てくるじゃないですか!
TENGAの製作に関われるとは、かなりニッチではありますが貴重な経験になるはず。
しかもここで作られるTENGAは「able! TENGA」という限定デザインで、パッケージのアートを手掛けたアーティストは山野将志さん(知的障がい)。
オブジェにもなりそうな、鮮やかで大胆な色使い。
プレゼントにも良さそうです。
実は山野さんは2011年に有料だった『Co-Co Life☆女子部』の1号でご紹介をした方!(私も記者会見に行った後に気づいた驚きの新事実でした!)
ますますご活躍されていて、本当に素晴らしいです……!
「able! TENGA」は1つ購入されるごとに障がい者支援として100円が寄付されるのだとか。
障がい者により生み出された製品が、さらに別の障がい者へと支援を繋げていく仕組みになっているのです。
コミュニケーションの場となるカフェが併設
「able! FACTORY」には、一般の方も利用できる「able! CAFE(エイブル カフェ)」が併設しています。
ちなみに、駐車場の横には広いドッグランがあり、犬の散歩の途中にカフェに立ち寄る……なんていうこともできるんです。
「able! CAFE」は、みんなが笑顔でいられる場所がテーマ。定期的にワークショップを開催して、ここで働く障がい者も訪れる人たちも、一緒に「できる」の喜びを共有するコミュニケーションの場として活用されます。
コロナ禍で、人とのコミュニケーションが希薄になっている昨今。いろいろな人と同じ体験ができる空間は、もはや貴重ですし、少しでも人と触れ合える機会があると、やはり日々のモチベーションにもつながりますよね。
障がい者の「性の悩み」を相談できる
さらに「able! FACTORY」の驚くべき取り組みが、性に関するメーカーが持つ知識を活かして、全国から障がい者の性の悩みについて相談できる「オンライン相談室」も開始予定なのだとか!
障がい者の性に対して「『不自由でも仕方がない』という考え方を変えていきたい」という松本さんの言葉に、私も思わず強くうなずいてしまいました。
もし今、性について悩みがあるなら、TENGAのオンライン相談室を利用してみてもいいかもしれません。
まさか、あのTENGAがこんなに障がい者支援に積極的だとは……恐れ入りました。
「able! FACTORY」は4月下旬にオープン予定。ここで働いてみたい!という方は、ぜひエントリーをしてみてくださいね。
住所:埼玉県川越市かし野台2-14-1
※送迎サービスはないので、公共交通機関か第三者の送迎での来所が必要です
電話番号:049-293-7497
TENGA able! project
エントリーはこちらから