「障がい者×性」恋愛のその先のこと 元☆人気セクシー女優の小室友里さんにインタビュー!

90年代を代表する人気セクシー女優だった小室友里(こむろゆり)さん。現在はタレント活動をしながら「男女コミュニケーション心理士®」としてセクシャルな悩みの問題解決に取り組み、カウンセラーや講演会登壇で活躍されています。セクシュアリティ問題のスペシャリストに、ご自身のキャリア形成や障がいのある人の「性」についてお聞きしました。

ーーー友里さんは有名な元セクシー女優さんですが、Co-Co Life☆女子部の読者はセクシー業界にはあまり詳しくないので、簡単に経歴を教えていただけますか。

私はもともとグラビアアイドルだったのですが、セクシー業界に活躍の場を移して、90年代後半に3年半ほどセクシー女優として活動していました。合計で43本出演作があります。ちょうどVHSからDVDへの移行期でしたので、このタイミングで誰か人気のある子を出そうということで白羽の矢がたって、世界初のアダルトDVDの主演をしました。セクシー女優業と合わせて執筆もしていました。週刊誌や月刊誌、スポーツ新聞などに多いときには8本くらい書いていた時期もあります。

ーーー今は「男女コミュニケーション心理士®」として幅広く活躍されていますが、セクシー女優からのキャリアチェンジはどうでしたか?

難しかったですね。現役時代から次のステップは漠然と考えていましたが、簡単ではなかったです。良くも悪くも名前も顔も知られていたので、どう隠してもわかってしまう。それに当時の経済効果は絶大なものがあったので、そこで築いたものもある。だったら「小室友里」の看板を背負ってやっていこうと思いました。男女のコミュニケーション専門家としてカタチになってきたのはようやくこの10年です。

最初はライティングをしながら舞台女優をしていましたが、プライドをへし折られることもありましたし、脱がないと今までのファンは離れていくんですよね。ファンは100分の1くらいになりました(笑)

アダルト業界でもなく、裸の女性でもない「小室友里」。そういうキャリアを積んで新しいお客様を一からつくりなおす。その作業は順調ではなかったですし、差別や偏見もありました。

差別や偏見は最近でもある 
自分の努力だけではどうにもならない

ーーー「差別や偏見を感じる場面」というのは障がいのある人にも通じる話かと思います、どのように解決していますか?

常に偏見とは戦っています。最初は怒りですね。自分の努力だけではどうにもならない解決できないものもあります。

私の場合は、信頼できる人に話を聞いてもらって発散して、その後は冷静になって「これが現実なのだ」と自分の中で落とし込みます。落とし込んだときに、ではこれを「どうやって発信しようかな」って考えてネタに変えるんです。

発信することで「それは差別や偏見だよ」と言ってくれる人がいるし、そういう意識が全くなかった人がこっちを向いてくれるきっかけになることもあります。

ーーーなるほど。そのお話は、障がいのある人、特にインフルエンサーや「Co-Co Life☆女子部」で活動しているスタッフとも感情の過程に通じるところがあるように思います。では、友里さんが障がいのある人の性について関心を持ったきっかけは何ですか?

障がいのある方からも悩みが寄せられるんです。ですから、いずれは自分の経験やスキルで触れるべきところなんだろうなと漠然と思っていて、アンテナを張っていました。軽い悩みからかなりディープな問題まで相談がきます。

私の特性から男性からのお悩みが多いのですが、陽のあたりにくい性の話に、そこに障がいが加わって、深海の深海のさらに深い部分の問題だなと思うことが多いです。

行為ができることはあたりまえではない 
自分たちの正解を探せばいい

ーーー読者に「恋愛」についてのアンケートをとったところ、「恋愛」はしたいけれどその先の進展に悩んでいるという人が多かったです。パートナーができても性的な関係になるのは障がいの特性で難しかったり、不安だったり。相手を満足させられる自信がないという声が多数ありました。

“相手を喜ばせてあげられないことが不安”というのは何かのゴールを見ているからそういう考えになるのかな。それって男性の願う男性側のゴールではないでしょうか。男性が最後まで満足することが性交渉なのだという情報をすり込まれてしまうと「自分はできないかもしれない」という気持ちになってしまいますよね。

ーーーでは具体的にはどう考えたらいいでしょうか?

人はあたりまえに行為ができるという考えが存在していますが、あたりまえじゃないんですよ。100人いたら100通りで正解なんてないんです。

私はこれが「できる」「できない」というのをあらかじめ提示しておくことが必要、最初にテーブルの上に出してお互いに話し合うことです。それに相手が歩み寄れるかどうか。それが愛だと思います。

もし「できないこと」を「できる」に変えたかったら、自分たちできちんと対話してチャレンジしていくこと。チャレンジするには信頼関係が必要、だから性交渉の前にはコミュニケーションがとても大事なんです。

ーーーコミュニケーションのあり方も知りたいです。

本当は教育が大事。「Yes」と言われなかったらそれは「No」のこと。「No」と言われたらそれは絶対に「No」だよ。それをちゃんと教えないといけない。

今の学校などでの性教育は行為ができてあたりまえが前提で話されるけど、いきなりは難しいんです。それは、障がいがある人もない人も同じこと。だから“コミュニケーションからが性教育です”と捉えていかないといけない。

できないことは、あなたのせいでも、相手のせいでもないんです。社会から決められているものに沿わせる必要はない。自分たちにしかわからない正解があるので、それをふたりで探してほしいなと思います。

自分の性のあり方をみとめて 
それから前に進んでいくこと

ーーー性について話すことは、人によっては抵抗があったり恥ずかしかったりしますが。

恥ずかしいことは恥ずかしいことでいいんです。性の話をオープンにしましょう、しましょう、ってよく聞くんですけど、そこまでオープンにする必要はないですね。受け取る側の度量や準備がないところにいきなり剛速球を投げつけるような話題かもしれない。だから大事な人との間だけでできるくらいがちょうどいいのかなと思っています。

ーーーパートナーとの関係が重要な鍵のようですね。

自分だけじゃないから、パートナーも一緒に考えてもらわなきゃいけない、だからやっかいなんですけどね(笑)

恥ずかしいことや、できないことばかりに目を向けてしまうとネガティブな気持ちになり、比較対象が健常者になってしまう。健常者にとってもそれぞれ悩みはあります。だからみんな自分のできることを深堀していけばいいんです。どうしても今は情報が多すぎるから、あれもこれもと考えてパンクしてしまう。ご自身でできるところからパートナーさんとよく話し合ってみること、一人でする(セルフプレジャー)なら“自分をゆるす”ことです。障がいによってもできることが違うので、自分にできることを極めていけばいいんじゃないでしょうか。

ーーー“自分をゆるす”というのはどういうことですか。

ご自身が自分の性のあり方は「これでいい」と認めることです。

それぞれの障がいの特性でそう簡単ではないとは思いますが、認めないと前に進めないので、自分の性のあり方を自分で“ゆるす”というところからまずははじめてみてください。

そして、自分の体を知ること。デリケートゾーンも顔と同じですからケアしてください。優しく洗って、優しく拭く、そして保湿が大事です。脱毛についてよく言われてますけど、ツルッツルにする前に、とにかく保湿。例えば、朝起きたときと、お風呂に入る前、入った後などで触って確かめてみてください、全然違うから。健康管理と同じです、自分の意識が向くことで恥ずかしいことではなくなります。

大人の学ぶべき性のおはなし 
男女コミュニケーション専門家の役割

ーーー講演会やアドバイザーとしての活動はどういった内容ですか?

経営者向けの講演会ではハラスメントをテーマにして、その中に少し性のエッセンスを入れたり、親世代の方向けには、お子さんへの性教育についてグループワーキングなども行います。「男女コミュニケーション心理士®」としてセクシャルな問題や男女間のテーマを取り扱っています。性の問題は当事者同士が言いにくいことや、今さら言えないこともあるけれど、間に入れる人は少ないのでそこでお役に立てるのではと思って活動しています。

ーーーセクシャルな問題の解決は難しそうですね。

どんな悩みも段階を経ていかないと解決しないです。でも、悩んでいる方は「今すぐ解決策が欲しい!」なんですよね。短距離走になっちゃうと性の問題は解決しないことも多いです。ですから気持ちの問題、心のあり方からアプローチしていかないといけない。やり方だけを渡してもがっかりすることが多いから。その場しのぎではない解決策を一緒に考えていくようにしています。

障がいによってそれぞれ違う 
まずは知りたい、教えてもらいたい

ーーー「Co-Co Life☆女子部」読者の性の悩みを友里さんに聞いていただきたいのですが。

障がいによってそれぞれ違うと思いますので、カウンセラーとしてはまずはどういったことで悩まれているのか知りたいです。答えをすぐには出せない問題もあるとは思いますが、知らないと答えられないので、どんな悩みや問題があるのかを教えていただきたいですね。一緒に悩んで「私たちのこと」として考えたいです。

今思いついたことでは、Co-Co Life☆女子部の性に関するルールブックみたいなものがあってもいいのかなと思いました。性的なコミュニケーションがお互い楽にできるよっていう、結婚のときの契約書みたいなもの。言いづらいこともそれにチェックするだけでいい。伝えること、聞くことも愛だと思います。

あんまりな要求をしてくる相手には「むちゃなこと望んでくるんじゃねーよ」くらい言っちゃっていいと思いますよ(笑)

小室友里(こむろゆり) 1975年7月28日生まれ
タレント・モデル・ラジオパーソナリティー 
男女コミュニケーション心理士®
*小室友里 official site

■写真:鈴木智哉 

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