東京・新宿区にある東京都庁は、医療や福祉、教育など都民の暮らしを支える行政機関である以外に、国内外から多くの人々が訪れる観光スポットでもあります。
そこで今回は、第一本庁舎45階の北・南展望室へ伺い、車いすでも楽しめるスポットを調査してきました。演奏動画でもおなじみの「おもいでピアノ」も演奏してきましたよ。
★今回のモデル

古澤 由莉香さん(29歳・二分脊椎)
神奈川県の就労継続支援B型事業所に在籍中。ピアノはYouTubeや耳コピ(音を聞いた感覚だけで弾くこと)で覚えて演奏を楽しんでいるのだとか。普段は黒いゴスロリ系のファッションが多いところ、今日はピアノの発表会をイメージして白いレース風の服をチョイス!
都庁の展望室は南と北の2つ。その違いとは?
東京都庁には「南展望室」と「北展望室」の2つの展望室があり、2つの展望室の構造や高さは全く同じ。どちらもカフェと物販店が設置されていますが、南展望室は物販店を、北展望室はカフェをメインとしています。
開室時間は、どちらも朝9時30分から入室可能で、北展望室は17時30分まで(南展望室の休室日は22時まで)、そして南展望室は22時までです(入室締切は、ともに閉室時間の30分前)。夜景を楽しむなら、より遅くまで入れる南展望室がおすすめです。
また、南展望室には、前衛芸術家の草間彌生さんが装飾を監修した「おもいでピアノ」が置かれています。誰でも弾ける、いわゆる“ストリートピアノ”ですね。
今回は、「おもいでピアノ」で演奏すべく、まずは南展望室に行ってみました!
まずはピアノのある「南展望室」から行ってみた!

45階にある南展望室には、都庁第一本庁舎1階のエレベーターで向かいます。乗る前に荷物検査があるので、できるだけバッグはコンパクトにしておくとスムーズです。
エレベーターに乗り込むこと55秒。高さ202mの45階に到着です。

朝10時過ぎにして、すでにたくさんの観光客が景色やお土産選びを楽しんでいます。
北と南どちらの展望室にも、車いすユーザーが利用しやすい工夫をいくつか発見。
まず、少し高くなっているエリアには、スロープがあります。

スロープの先にある、大きな窓から東京の景色をじっくり楽しむことができます。

また、2方面各2か所に、車いすでも窓により近づけるよう出っ張りをなくした、車いす優先のゾーン(車いすマークが目印)があります。

由莉香さんは実際に景色を見てみて「車いすマークのあるゾーンは、確かに他の場所より窓に近づきやすかったです。でも、スロープを上がったところにある窓の方が大きくて下まで見やすいので、車いすユーザーにはこちらがおすすめかも」とのこと。
体を少し乗り出せる方や、背が高い方なら、車いすゾーンでも見やすいかもしれません。
また、南展望室の中央には、ここにしかない特別な「東京の旅の思い出」を見つけることができる店舗「TOKYO Mikke!」があります。

「Mikke(みっけ)!」という名前には、思いがけない発見や、うれしい出来事が起きた時の「見つけた!」とポジティブな気持ちになれることに由来。『東京の旅の思い出』を見つけられる店舗を目指す、という思いが込められているのだそう。江戸切子や手ぬぐいなど、日本や和のイメージが強いアイテムがそろっています。

由莉香さんは、和紙で作られた折り鶴のイヤリングに一目ぼれ。浴衣などの和装に合いそうです♡

また、店舗には小さなカフェも併設。

販売されているメニューは、和を意識したドリンクやスイーツ。少しですが、アルコールもあります。また、食品の販売では、冷凍食材の活用やプラスチックのカトラリーを極力減らすなど、ロスが少なくなるよう工夫しているそう。美味しいだけでなく、サステナブルな配慮も行き届いています。
★いよいよ「おもいでピアノ」の演奏!
南展望室の目玉といえば、やはり「おもいでピアノ」。だれでも演奏が可能なストリートピアノです。
ピアノが設置されたのは、2019年4月。ラグビーワールドカップや東京オリンピック2020大会を目前に控えたころでした。都庁へ観光に訪れる方々が音楽を通じて交流を図り、さらに思い出の詰まった寄贈ピアノを弾いて、そしてその音を聞いて、それぞれの方の“思い出づくり”に役立てられたら、という思いから、ピアノの設置が進められました。

鮮やかな黄色に黒のドットデザインが目を引くこのピアノは、前衛芸術家の草間彌生さんが監修したもの。草間さんがピアノ設置の目的に賛同され、装飾の監修をされたのだそうです。
さっそく、由莉香さんも多くのギャラリーに見守られながら、演奏に挑戦。列に並び、順番が来たらピアノの前に座ります。車いすのままでも、鍵盤に手が届く高さです。
ピアノを弾くときは、1人5分以内。さらに、撮影する場合は三脚の利用は禁止で、指定の場所にスマホを設置したり、手でカメラを持って撮影したりする場合はOKです。ピアノの演奏可能時間は、10時~12時、14時~16時まで。混んでいることもあるので、確実に弾きたい場合は、開始時間に行くのがおすすめです。
曲目は、みんなが一度は聞いたことがある「猫ふんじゃった」と「かえるのうた」。動画で見て覚えたと言う由莉香さんですが、たくさんの人の前で緊張感はMAX!!プレッシャーの中で、一生懸命頑張りました。
※ページ最後に動画も公開しています!

「多くの人たちが見ていたので、とても緊張しました。グランドピアノを弾くのは初めてでしたが、綺麗なピアノで、弾いていて楽しかったです」(由莉香さん)
張り詰めた中でも、楽しめたよう。広い南展望室に美しいピアノの音色が響き渡ると、一気に和やかな空気に包まれました。
北展望室のオシャレなカフェでリラックス♪
次に、北展望室にやってきました。南展望室から移動するには、1階に下りてから北展望室行きのエレベーターに乗り換えます。

北展望室の中央には、「CAFE&SHOP SOCOCOCO(そこここ)」があり、軽食やドリンク、売店でショッピングを楽しむことができます。

カフェの周りを囲むベンチの背もたれには、イラストレーター・テキスタイルデザイナーのムラタトモコさんによる、かわいいイラストが。東京をイメージしたイラストで、眺めているだけでほっこりした気持ちになります。
由莉香さんは、「青空」「夕焼け」「黄昏」の3種類の東京の空をイメージした「Sky Float」の中で「“青空”ブルーソーダフロート」を注文。レジカウンターの高さは車いすでも利用しやすく、支払方法もカードや交通系IC、コード決済などキャッシュレス決済が充実。スムーズに支払いができます。

注文後は、受け渡しカウンターから商品を受け取ります。

快晴の空を連想させる、爽やかな青色のソーダにバニラアイスと都庁の形のお菓子がのっている、見た目がキュートなフロートです。

「美味しい!シンプルなソーダの味で、飲んでいて爽やかな気持ちになれました」とうれしそうに話す由莉香さん。カフェのテーブルやいすについても、「自由に動かせて車いすでも入りやすい!」と太鼓判です。

カフェの横には、こぢんまりとしたショップも併設。こちらも南展望室と同じく、日本の伝統的なアイテムや雑貨を販売しています。じっくり見てみると、日本にいると意外と気づかない魅力を発見できるかもしれません!
多目的トイレが充実で安心!様々な人が楽しめる都庁
国内外から様々な人が訪れる都庁では、障がいの有無にかかわらず、どんな人も楽しめるようにあらゆる工夫がされており、1階の総合案内所では、車いすの貸出を行っています。
また、北・南展望室どちらも2部屋ずつ多目的トイレを設置。オストメイトや簡易ベッドも完備しています。使用中は、外にあるトイレのマークがピンク色に光り、空き状況が一目でわかりやすくなっています。


他にも、筆談や手話の対応、盲導犬・介助犬といった補助犬の同伴も可能で、みんなが利用しやすいよう、さまざまな対応をしています。

最後に由莉香さんに今回の感想を聞いてみました。「都庁はとても広く、観光の方がとても多かったですが、スムーズに移動できました。ソーダフロートもおいしかった!(笑)どんな人が来ても楽しめるところだと思います」。
どちらの展望室にもテーブルやベンチが多く置いてあり、おでかけの休憩にもぴったり。東京の景色とともに、飲み物やピアノの演奏を楽しみながら、ゆったりした時間を過ごすことができます。
皆さんも東京に来たときは、ぜひ都庁の展望室に足を運んでみてはいかがでしょうか?
★東京都庁でのピアノ演奏とおでかけ動画をご覧ください!
●東京都庁 展望室
東京都新宿区西新宿2丁目8-1
JR・東京メトロ丸の内線・都営新宿線新宿駅から徒歩10分
都営大江戸線 都庁前駅直結 ※いずれもスロープ、エレベーターあり
営業時間:南展望室 9:30〜22:00
※毎月第1及び第3火曜日(祝日の場合は翌平日)は休室日。
北展望室 9:30〜17:30(南展望室の休室日は22:00まで)
※毎月第2及び第4月曜日(祝日の場合は翌平日)は休室日。
詳しくは東京都庁見学のご案内をご確認ください。
写真・動画:阿部謙一郎 文:榎本佑紀 編集:関 由佳