Co-Co Life☆女子部のプロデューサーで、団体代表の遠藤久憲が会って話したい、と感じた方と対談をする企画『遠藤Pの「ちょっと聞かせて」』。
第2弾は、障がい者専門のデリヘル(デリバリーヘルス:派遣型の性風俗店)を経営するショウさん。事業を続ける中でわかった障がい者の性にまつわる気づきや、2人の恋愛必勝法などについて、赤裸々に語り合いました。
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開業のきっかけは「“障がい者の性”へのタブー視」と「将来への危機感」
遠藤P もう知り合ってからかなり経ちますが、改めてお話を伺わせてください。障がい者専門のデリヘル『はんどめいど倶楽部』はかなり長く続いていますよね。継続していて、すごいなといつも思っていて。
ショウさん そうですね、もう13年になります。でもその中でも、前半と後半で環境は大きく変わっています。
遠藤P そもそも、障がい者専門のデリヘルを始めようと思ったきっかけは何だったんですか?
ショウさん きっかけは、僕自身が介護福祉士で、さらに性風俗店のユーザーだったという部分がリンクしたからです。
もし自分が障がいを負った時、今楽しんでいる性の文化はどうなるのだろうと危機感を覚えて、それなら障がいがあっても楽しめる状態を自ら作っておこうと思ったことが1つ。
そしてもう1つは、障がい者の性のタブー視感を目の当たりにしたからです。
遠藤P 当時はまだそういう感じ強かったですよね。
ショウさん そうですね。多くの介護福祉士が利用者さんの性衝動を目撃しても、誰もミーティングでは話題に挙げなかったんです。これは隠ぺいされているんだなと思って、実際に調べてみたら社会的にタブー視されているという現実を目の当たりにしました。
それが、障がいがあっても楽しめる性文化を作っておきたい、という考えとリンクして、社会問題の解決と自分の将来の展望を兼ねたところで事業を立ち上げた、という感じですね。

遠藤P デリヘルという派遣型の風俗店にしたのは、移動困難な人に対するアプローチだったんですか?
ショウさん それもありますが、そもそも店舗のある風俗店を新規に立ち上げることが法的に難しかったんです。結果的に、障がい者専門という意味でデリヘルの形がマッチしたからよかったです。
遠藤P なるほど。立ち上げてから依頼はすぐあったんですか?
ショウさん それは時間とともにですね。最初の数年は年に1桁しか依頼がなかったです。でも、それは想定内だったから当時は介護福祉士の仕事を続けていましたし、できるだけコストを抑えながら回していました。趣味でやっていけるかなくらいで始めたのもあるので。
遠藤P え、じゃあデリヘルの事業始めてからも、まだ夜勤とかもやっていたのですか?
ショウさん はい、普通にやってましたよ(笑)。実は今も時々介護の仕事はしています。キャストは半分以上が素人なので、重度のお客さんの介助は僕が対応しているんですが、一度完全に辞めたら体が介助のコツを忘れてしまって。だから、体にしみこませるために、知り合いのところで時々介護の仕事をさせてもらってます。
遠藤P そうなんですね。で、1桁しかなかった依頼が増えたのはいつ頃なんですか?
ショウさん 始めて5年くらいで、フジテレビの深夜のドキュメンタリー番組に出演したんです。そしたら、翌朝ホームページのアクセス数が1000倍にまで跳ね上がっていて。それまでずっと2桁くらいしかなかったので、さすがに『うわ、すごっ!』と思いましたね(笑)。そこでかなり認知度が上がって、売り上げも1桁上がりました。やはりメディアの影響力ってデカいですよね。
遠藤P うん、今はテレビはオールドメディアと言われたりもしていますが、やはり影響力は強いですよね。
脳内射精、硬直した手が動く…性の力は人知を超える!?
遠藤P メディアに取り上げられたのが大きな転機になったと思いますが、それ以降どんな変化がありましたか?
ショウさん テレビに出た5年目以降、世の中の環境も少し変わってきて、障がい者の性に関わる団体も増えてきていました。
当初は頼まれたらなんでもやっていて、女性の障がい者の性の悩みを聞くこともあったんです。でも、他に性の問題を取り上げてくれる団体が現れたので、うちとしては、男性の障がい者が性を楽しむ、というところに特化できるようになりました。

遠藤P 障がい者の性を扱う、というところで、困ったこととか驚きとかありましたか?
ショウさん そうですね、やはり重度の方だと命に係わる時があるのが怖いですよね。
以前、筋ジストロフィーの方で『ずっと女性と触れ合ったことがなく、このまま終わりたくないから、一生に一度の思い出を作りたい』という依頼があったんです。でも、すでに末期で酸素マスクをつけていて、10分外すだけでも命に係わる状況。けれど、そのままではキスもできないから、僕が酸素マスクを持ちながら、キスをするたびに外したりつけたりして…。あれは本当に緊張感がありましたね…。
遠藤P 一対一ではなく、間に入ってサポートするケースもあるんですね。
ショウさん そうですね。どうしても必要な時だけではあるんですが。でも、依頼したお客さんは大満足で、感謝の言葉をいただきました。
福祉や医療の現場では、当事者の満足感ってやりがいにつながると思うんですが、この仕事も感謝の気持ちがすごく伝わるんです。だから、危険な仕事でもこれは受けなきゃいけないって思いますよね。
遠藤P そうですよね。ちなみに、今は基本的に男性障がい者の依頼が中心なんですよね?
ショウさん はい、今は男性のみです。さまざまな障がいの方にご依頼いただきますが、障がいによっては、射精まで至らないこともあるんです。でも、触れ合うだけで満足できるとか、脳内射精ができるって言う人もいます。実際に射精していなくても、脳内で達することができるそうなんです。
あと、驚いたのは、医療の常識を超えた機能回復力ですね。脳性まひで、手が硬直して手を広げられなかった方が、キャストに触れたい思いが強くなって動かしたら、手を開けるようになったんです!やはり、性欲は人知を超えるんだなと実感しましたね。
遠藤P それはすごいですね!たしかに、完全に神経が切れていなければ不可能じゃないって聞いたことあります。モチベーションって大事ですね。
ゲストとキャストが結婚!恋愛したいなら「まず打席に立て!」
遠藤P すでにいろいろ驚くべきことを伺っていますが、ショウさんが13年間の活動の中で、一番印象に残っていることって何ですか?
ショウさん 一番は、キャストとお客さんが結婚したことですね。キャストの中には、障がい者と触れ合いたくて応募する人が一定数いるんです。そのタイプと重度の筋ジストロフィーのお客さんが結ばれて、このマッチングは奇跡としか言いようがなかったですね。
通常は、デリヘルのキャストがお客さんとくっついちゃうと、両方いなくなっちゃうから、タブーだし、お店からしたらマイナスでしかないんですよ。でもこのカップルは神がかっていると思うほど奇跡的だったし、お客さんの夢にもつながるのかなと思ったので、うちはOKにしています。
遠藤P そういうことがあるんですね!1組だけですか?
ショウさん いや、それから2組くらいカップル成立しました(笑)。マッチングアプリ的なスタイルになっていて、この状況を僕は面白いなと思っています。想定していなかった現象だったので(笑)。

遠藤P はんどめいど俱楽部のコンセプトを『障害者だって恋もしたい、セックスもしたい』としていますが、やはり性だけでなく、恋愛も対象にしているんですか?
ショウさん そうですね。コンセプトに“恋”を先に置いているのは、デリヘルは性の対処法でしかなくて、本当は恋人を作ってセックスして、人生を楽しんでほしいという気持ちからです。
遠藤P たしかに、私も前に「恋愛しようぜ」と周囲に発信していて、最初ショウさんと知り合ったのも、その部分で通じ合ったからでしたね(笑)。
ショウさん そうでした、懐かしい(笑)!
遠藤P 恋愛したいという人には、まず「打席に立つ」ということを推していました。
ショウさん 本当にそう。3割バッターだとしたら、10本中3本あたるっていうことだから、100本打てば30本当たる。母数を増やせば、分子も大きくなるんですよね。
僕も恋愛難民だったし、背が小さくてぽっちゃりで顔も自信がないっていうトリプルパンチですが、何度も打席に立つのでまあまあ恋愛楽しんでますよ(笑)。
遠藤P そうそう、恋愛経験が増えれば慣れてくるし、その分、次は上手に接することができるようになりますよね。
ショウさん そう。むしろ、「三振するかも」って臆病になることが一番の敵かな。自信のなさっていうか。だから、自信がないのはもう置いておいて、そのままの自分を好いてくれる人を探した方が早いと思います。
遠藤P そのためには、まず彼氏彼女がほしいと周りに発言することが大事ですよね。意外と周囲に世話を焼いてくれる人が現れたりするんで。それだけでも間口が広がりますよね。
障がい者のカップルのために。もっと宿泊施設のバリアフリー情報を発信したい
遠藤P 最後に、この先の展望など何かやってみたいことはありますか?
ショウさん デリヘルの事業をベースとして、お客さんの思い出作りを頼まれることが多いので、例えばデートの同行や、女性と混浴とか、そういった事業はこれからも続けていきたいです。
あと、温泉の同行をすることが多くて、リフトがついている温泉宿にもあちこち行くんで、そういったバリアフリー情報を届ける発信源になれればと思います。
実は、カップルホテルとか温泉宿のバリアフリー情報を載せているブログをすでに作っているんですけど、圧倒的にデリヘル事業のサイトよりもアクセスが高いんですよ。障がいのあるカップルのために、もうちょっと情報を厚めにしていきたいなと思います。

遠藤P いいですね、それはCo-Co Life☆女子部でも協力していきたいです。
ショウさん ありがとうございます(笑)。あとは、女性の障がい者専門のデリヘル(女性用風俗)ができたので、もっと女性が利用しやすい環境になったらと思います。障がいの有無にかかわらず、やはり男性に比べて女性はハードルがまだまだ高いと思うので。
遠藤P そうですね。Co-Co Life☆女子部の読者にも性の悩みを抱えている女性は多いと思います。今後、弊団体でもその話題は取り上げていきたいですね。
創刊14年の『Co-Co Life☆女子部』と、ほぼ同じ時期にデリヘル事業を続けてきたショウさん。“障がい者の性”に対するタブー視は、Co-Co Life☆女子部でも実感してきただけに、遠藤Pとの会話は終始白熱していました。
障がい者当事者の恋愛や性に関するテーマは、今後も取り上げていきます!ショウさん、ありがとうございました。

ショウさん
スポーツ用品店で勤務中、体調を崩して休職し、その後退職。不況の中ヘルパー2級を取得し、福祉業界へ転身。業界に深い興味関心を持ち、介護福祉士を取得。介護の仕事を続けながら、40歳で障がい者専門デリヘル「はんどめいど俱楽部」を開業。現在は、単発的に介護の仕事に関わりながら、デリヘル運営を中心に活動している。
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