東日本大震災から14年。災害の多い日本で暮らしている私たち。
日々の防災意識が高いかというと…正直、あまり危機感を持てない人が多いかもしれません。
しかし、障がいのある人の死亡率は、一般の住民より高いという報告があります。
今回は危機管理アドバイザー国崎信江さんと、宮城県で被災した経験がある、読者モデルの山田智子さんが対談しました。
避難所に行けない現実、日々の備え、地域のコミュニティ作りーー自分を守る防災を考えていきましょう。

防災専門家 株式会社危機管理教育研究所 代表危機管理アドバイザー国崎信江さん(左)
読者モデル 山田智子さん(右)
「自分の命は自分で守る」覚悟と備えを始めよう
震災といえば、東日本大震災や能登半島地震が頭に浮かびます。
震災後の調査結果では、残念ながら障害者手帳所持者の死亡者が住民全体のほぼ2倍だったことが示されていました。(参考:消防防災博物館)
「震災時、避難所では車いすの人を見たことがなかった」と話すのは読者モデルの山田さん。東日本大震災では宮城県東松島市で被災しました。
国崎さんは「自分の命は自分で守る覚悟を持つことが大事です」と語ります。
「命を守る覚悟をすると、防災の備えを考え、備えたことで家族や大切な人を思いやり、次に地域を知ろうと意識していきます」と自身の経験を振り返りました。

障がいのある人が避難所で暮らすことが可能なのか。大事なことは自分の目で確かめること。一度は地域の防災訓練などに参加することが大事です。
「近くの避難所がどうなっているのか、想像だけでなく見ることで気付くことがたくさんあります」と話しました。
実際に障がいのある人はバリアフリーやプライバシーの問題で、家にとどまるのが現状です。そのために普段からできる防災を教えてもらいました。
無理なく続ける「コツコツ防災」
防災対策は費用の負担が多く、後回しになりがち。国崎さんの進める「コツコツ防災」は1ヶ月3,000円〜5,000円くらいの金額を決めて防災の準備を進めます。

例えば——
「今年は“キッチンの防災を強化したい!”と思えば、今月は冷蔵庫の転倒防止器具を設置。来月は食器棚。再来月は電子レンジ…と家計の負担を抑えながら整えていきます」と国崎さんの言葉には説得力があります。
3,000円〜5,000円でも高くて難しい場合は、百均ショップでもそろえられる小物から取り入れてみましょう。なんと国崎家では、時計や写真立ては紙素材、花瓶はゴム製と地震で物が飛んできても怪我がないように徹底していました。
意識をキープするには「できる範囲で行う」ことです。
普段使いのバッグに入れておきたい防災グッズ
お二人に普段バッグの中に、どんな防災グッズを入れているのか尋ねました。
厳選したグッズがこちら
国崎さん
・モバイルバッテリー
・飲料ゼリー
・ヘッドライト
・携帯トイレ
・止血パッド
「飲料ゼリーは腹持ちがよく、水より利尿作用を抑えられます。最低限これだけはバッグに入れています」と持ち物が水ではないことに驚き、発見がありました。
山田さん
・モバイルバッテリー
・常備薬
・生理用ナプキン
・ウェットティッシュ
・携帯歯ブラシセット 他
山田さんは「私は薬を欠かせません。生理用品も、慣れないものだとストレスになるんです」と防災用ポーチを見せてくれました。

また、「車やバイクはガソリンを常に満タンにすることも欠かさないでほしい」と強く強調しました。
車で移動するだけでなく、エンジンがかかればエアコンが使えます。エンジンがかからなくても着替えやスマホの充電ができ、雨風を凌げます。車は立派な防災ツールです。
さらに国崎さんが特に車いすの人には、エマージェンシーベストと推奨しました。
釣りをする人たちが着るポケットが多いベストでいいので、一着用意が必要です。ポケットに最低限の必要な物を入れておき、震災時はそれだけを着て逃げられるようにします。

国崎さん自身がプロデュースしたベストを見せてもらうと、こだわりのポケットがたくさんあり、なんと背中にはノートパソコンや給水袋を背負えるようになっていました。
「車いすの方は膝にバッグを置く、リュックを車いすの背もたれにかける方が多いですが、避難に集中するにはベストが合理的です」と熱く語られました。
取材班一同、「なるほど〜!」と頷かずにはいられませんでした。
地域とのつながりが“最大の防災”
障がい者の人たちが、避難所で生活することの難しさについて聞きました。
「厳しいことを言いますが、誰もが被災すると自分や家族の安否が一番気がかりです。そこで、普段関わりのない人が“助けてほしい”と言っても、世話をしてもらえないのが現実です」とはっきりした口調で言いました。
山田さんも「自分のことだけで精一杯。優しい言葉をかけられる状況ではなくて、涙さえ出ません」と必死だった様子が伝わります。
ですが、普段から地域との交流は防災につながるといいます。
国崎さんは「行きつけの店」を見つけることが大事だと話していました。
「普段から地域に顔を出すことが大事です。面倒に感じても“あの人どうしたかな”と思ってもらえる関係をつくることも防災です。カフェなどで、店員さんと話せる間柄になること。“私は〇〇と言います。そこに住んでる者です”と一言伝えるだけで覚えてもらえます」。
気にかけてもらえる存在になることを面倒に思わないよう、一歩踏み出す必要がありそうです。

正確な情報と知識を持って
普段からできる防災の一つに、災害情報を入手できる自治体の公式アカウントをフォローしておくと安心です。
そしてもう一つ、すぐにできることが「想像力」だといいます。
「電車に乗っているとき、職場や家にいるとき——“今ここで地震が起きたらどうするか”を一瞬でも考えてください。
想像しておけば、いざという時“我に返る時間”が短くなり、行動が変わります」。
ライターの私も記事を書きながら「今、この瞬間に地震が起きたらどうするか」と考えてみました。机の下に潜って、頭を守るなど少し想像するだけで素早く行動できそうです。
スマトラ沖で感じたこと
国崎さんはスマトラ沖地震の震源地スマトラ島を訪れた時のことを語りました。
「かつて、賑わっていたという街は津波で更地になっていて、津波の水は“黒くて生温かい”という証言を現地の方から聞きました。津波で車が流され、石油が流れてしまっていた。それを飲んでしまった人々がどうなるのか…想像することが防災の原点です」。
スマトラ島で得た被災地の教訓をもとに、2011年2月、岩手県大船渡市で講演会を行いました。その1ヶ月後、東日本大震災で大津波に飲み込まれたのです。
幸い、講演会を聞いた人たちは全員無事だったと報告が入りました。「あの話を聞いていなければ、逃げていなかったかもしれない」と参加した人は話していたと言います。
「誰かの命が守られたと知ったとき、啓発活動の意味を強く感じました」と国崎さんは優しい目をされました。

読者モデルの山田さんも自身の経験から防災啓発活動に取り組んでいます。「防災の意識を自分ごとに捉えてもらえるよう、これからも発信していきます」と意気込んでいました。
読者にメッセージ
最後に国崎さんの思いを伝えてもらいました。「かなうならば、みなさんにも被災した現地に足を運び、実際に起きた出来事について話を聞いてほしいと思います」。
これからも、お二方は防災の大切さを世間に伝えていきます。
編集後記
少し前に私の職場で避難訓練を行いました。
全員で避難所まで歩こうと外に出ました。ところが、障がいのある人がいるため、いつのまにか歩ける私たちの間に大きな距離ができていました。
その光景を見て「震災が起きたらどうしたらいいの?」と不安を感じたことをきっかけに、今回の企画が生まれました。
今回のインタビューの中で、日々の暮らしの延長に、命を守る準備がありました。
常に想像力を働かせること。
その意識が、次の災害で誰かの未来を変えるかもしれません。

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写真:渡邊誠 企画・取材・執筆:飯塚まりな 動画:扇強太 動画編集:土井唯菜 榎本佑紀