”あの人”の今♯3 ビヨンドガールズ

この記事は2022年5月31日発行の季刊誌「Co-Co Life☆女子部 vol.40」をWeb用にリメイクしています。掲載している情報は誌面発行当時のものとなります。

メンバーは青春そのもの
仲間がいるから強くなれる

本誌2017年冬号(vol.22)の表紙を飾ったことをきっかけに活動を開始した、車イスチャレンジユニット「ビヨンドガールズ」。その後、メンバーの3人はさまざまなメディアで活躍しています。あの撮影から紆余曲折を乗り越えた、それぞれの「今」について、語っていただきました。

3人の出会いはココライフ女子部の取材

 ビヨンドガールズを結成する年となる2017年8月。横浜のフレンチレストラン「HANZOYA」で、特集「大人女子のたのしみ」のインタビュー取材と撮影が行われました。そこで小澤綾子さん、梅津絵里さん、中嶋涼子さんの3人は初めて顔を合わせ、運命的な出会いを果たしました。表紙の撮影の後、梅津さんが主宰する、障がいや病気を抱える方がメインで集うコミュニティ「オトナ女子会(オトジョ会)」が開かれ、3人は同じテーブルに。そこから意気投合し、小澤さんがユニット結成の声掛けをしたことから、ビヨンドガールズが誕生しました。

 この頃は、まだまだ車いす女性のユニット活動はめずらしかったこともあり、2018年2月のデビューイベントからメディアや当事者による注目度は急上昇! ネットニュースにも取り上げられました。

 全国各地のイベントや講演会に引っ張りだことなり、ついに昨年、目標としていた2020東京パラリンピックの閉会式にも出場を果たしました。

 しかしその間には、梅津さんの持病悪化というつらい事態も……。さまざまな苦難を乗り越え、ビヨンドガールズのメンバーは、今も進化を続けています!

ビヨンドは「青春のやり直し」
2人がいるから何でも挑戦できる

小澤綾子さん
(39歳・筋ジストロフィー)
BEYOND GIRLSリーダー。外資系IT企業に勤めるかたわら歌や講演の活動を通じ、病気や障がいについて発信。大阪・関西万博の応援ソングを歌う「ゆるミュージックほぼオールスターズ」のメンバーとしても活動中。
Twitter  @kozakozakozani

 ビヨンドガールズのメンバーと出会う前から、社会に発信する活動をしていたんですけど、いつも独りぼっちだと感じていました。でもココライフ女子部で何でも話せる2人に出会って、「このお店のトイレ広くて感動!」とか、健常者の友達には言いにくい話題でも共感が得られるのが本当にうれしかったです。話に夢中で終電を逃したり、本気でケンカしたり(笑)。みんなで「青春のやり直し」をしている感じでしたね。一人じゃないと思えたから、何にでも挑戦したいという気持ちが湧いて、CD制作、講演会、テレビ出演、コンサートと活動の幅も広がりました。

 実はこれまで、2020東京パラリンピック競技大会に関わることをゴールに活動していたんです。成果が実って2021年の閉会式に涼子と出演できることが決まり、「これで引退しよう」と考えていました。でも、パラの会場で障がいの有無に関わらず、いろいろな人が楽しそうにしている光景を目にした瞬間「こんな社会を未来につくっていきたい! ここはゴールじゃなくてスタートなんだ」と強く感じ、新たに再出発を決めました。

 次の目標は2025年の大阪・関西万博。海外から多くの人が訪れ、きっとインクルーシブな社会に向けて意識が変わる大きなタイミングになると思います。私もがんばって活動し続けていきたいですね!

生死をさまよった2020年
誰よりも「生きる」を楽しみたい

梅津絵里さん
(44歳・全身性エリトマトーデス・中枢神経ループス)
6年間の寝たきり生活を経て車いすに。2020年に腰の病気が悪化。持病が再燃し一時意識不明となったが、5回のオペを乗り越え現在自宅療養中。障がい、病気の大人のコミュニティ「オトジョ会」を運営。Twitter @umeerin

 2017年に表紙を飾ってから、2020東京パラリンピックに向けて注目が集まり、その波に乗って一気にメディアに出る機会が増えました。ココライフ女子部での撮影で、人生が大きく変わりましたね。

 でも目標にしていた2020東京パラリンピック開幕の1年前に、化膿性脊椎炎で腰の調子が悪化し、入院。その手術が引き金となり、持病(SLE)が再燃し、集中治療室に運ばれ生死をさまよいました。

 2週間後、無事に一般病棟に戻れましたが、結果的に1年半の入院生活となってしまいました。あれだけ夢見た2020東京パラリンピックを病室から見ることになり、「なんで私は病室にいるのだろう」とつらかったです。

 けれど、病室から見るビヨンドガールズの2人は輝いていました。その時「私は今、自分の病気と闘っていて、私が見えない景色を見せてもらっているんだ」と、自然と感謝の気持ちが沸き上がりました。そして、早く病室から出たいと奮起する勇気をもらえました。

 今日の撮影は再スタートを切ったようにも感じられます。今は応援してくれる人が活動を始めた頃の何倍にも膨れ上がり、たくさんの経験を通して私自身強くなっていると感じます。

 私は今日も、誰よりも「生きる」を楽しんでいます! そんな私を見て、誰かの力になれたら良いなと思います。

会社員を辞め、ひとりの発信者へ
目標は「乙武さん超え」

中嶋涼子さん
(35歳・横断性脊髄炎)
9歳で下半身不随になり、車いすユーザーに。米国留学後、通訳、映像エディターを経て、2018年より車いすインフルエンサー、俳優へ転身。YouTube『中嶋涼子の車椅子ですがなにか!? -Life on Wheels-』は登録者数1.7万人!
Twitter  @NakashimaMinion

 2017年にココライフ女子部の誌面に出る前の私は普通の会社員で、いつも「私ばっかり、なんでこんなにつらいの」と思って生きていました。実は、撮影に出演したきっかけはナンパ(笑)。すでに読者モデルをしていた方のお母さんからコンビニで声をかけられ、編集部に連絡したおかげで、生まれて初めての障がい者の友達となるビヨンドガールズのメンバーと出会えました。

 病気や障がいがあっても関係なく楽しんでいる2人の生き方は、私には衝撃的でした。3人で「障がい者あるある」トークをしたことも、一人きりで苦しかった気持ちを軽くしてくれました。さらには、綾子が講演で障がいについて伝えたり、勇気づけたりする姿を見て、私も障がい者のイメージを変える仕事がしたいと思い、会社を退社。2018年から「車いすインフルエンサー」として生きることにしたんです。

 今は基本的にソロで活動中です。5年の間に、バラエティ番組やドラマ、2020東京パラリンピックの閉会式にも出演して、人生が大きく動きました。今「生きていることが楽しい!」と実感しています。

 今後は自分のトーク力をさらに高めて、メディアに当たり前に障がい者がいる世界にしたい。目標は、乙武洋匡さん超え(笑)。誰もが知っている障がい者の一人になりたいです。

BEYOND GIRLS年表

2017年·出会い
  8月 本誌vol.22の表紙撮影で3人が初めて出会う
11月 小澤さんの声掛けで「BEYOND GIRLS」を結成
12月 勤めていた会社「FOXネットワークス」を退社(涼子)

2018年
  2月 BEYOND GIRLSとして正式に活動を開始
  3月 障がい者タレント事務所「Co-Co Lifeタレント部」に参画
    著書『10年前の君へー筋ジストロフィーと生きる』出版(綾子)
  6月 ニッポン放送のWebラジオ「BEYOND
    GIRLSのオールナイトニッポンi(アイ)」出演
  9月 初の主催ワンマンライブが実現
11月 本誌vol.26にて猪狩ともかさんのインタビュアーとして出演(涼子)
   本誌vol.26にてYKKのUDファスナーのCMモデルとして出演(絵里)

2019年
  7月 中嶋さんと梅津さんがCo-Co Lifeタレント部を退所しフリーランスとして活動を開始
    YouTubeチャンネル『中嶋涼子の車椅子ですがなにか!? -Life on Wheels-』開始(涼子)
    療養のため、BEYOND GIRLSでの活動休止を発表(絵里)
  9月 BEYOND GIRLS新メンバーオーディションを開催し、広く活動者を募る 

2020年
  2月 本誌vol.33にて『おうち時間の楽しみ方』出演(綾子)
  4月 車いすインフルエンサーを目指し、BEYONDGIRLSを卒業。
   設立者メンバーとしてアンバサダーに就任(涼子)
  7月  腰の悪化で入院。持病が再燃し、2週間意識不明に。その後退院するも、8月に再入院(絵里)
    すべての車いす女性が自分自身を超えるきっかけ作りとなるよう、誰もが参加できるProjectとしてBEYOND GIRLSが進化
11月 本誌vol.34にてコラボバッグ「apt(アプト)」のアンバサダーとして出演(綾子)

2021年
  1月 約1年半の入院で5回の手術、治療、リハビリを経て退院(絵里)
  9月  2020東京パラリンピックの閉会式に出演(涼子)(綾子)
12月 綾子·涼子トークコンサートでメンバー3人が約2年ぶりに再会する

2022年
11月 万博テーマソングを歌うバンド「ゆるミュージックほぼオールスターズ」メンバーとしてSonyMusicよりデビュー(綾子)

この記事のライター/元山文菜
(41歳・臼蓋形成不全症)
『Co-Co Life☆女子部』の前編集長。子育てと会社経営をしています。

この記事のライター/高山
(36歳・筋ジストロフィー)
2人の娘を育てながら、企業でライターとして働くママライター。

撮影:鈴木智哉 ヘアメイク:髙橋早登子 デザイン:森田悠介 取材協力:サロンドゥインナップ青山 文:高山 元山文菜 赤谷まりえ 取材・編集:関由佳