Co-Co Life☆女子部のプロデューサーで、団体代表の遠藤久憲が会って話したい、と感じた方と対談をする企画『遠藤Pの「ちょっと聞かせて」』。
今回は以前、読者アンケートで48名の方にお答えいただいた「合理的配慮」について、おおごだ法律事務所の大胡田誠弁護士とココライフ女子部代表遠藤Pによる対談を行いました。
12歳の時に全盲となった大胡田弁護士。今年で弁護士生活18年目を迎え、合理的配慮の本質や声を上げることの大切さなどを話してくださいました。
互いに仕事ができ、尊重し合える関係性を築くには?
障がい者雇用の企業側に求められる配慮とは?
明日への希望を届ける対談のスタートです!

《プロフィール》
大胡田誠 弁護士
静岡県出身 全盲視覚障がいを持つ。
2006年司法試験合格、2007年弁護士登録
※司法試験に受かった日本で3人目の弁護士
合理的配慮はつかみどころがない
遠藤P:はじめまして、お会いできてうれしいです。大胡田さんは合理的配慮についての講演会をされているとお聞きしました。
大胡田弁護士:こちらこそ、ありがとうございます。私は普段、離婚や相続、家族関係のトラブル、交通事故など担当しています。あとは 福祉関係の団体とか、企業からの顧問業務が主な業務を行いながら講演会を行なっています。
遠藤P:“合理的配慮”という言葉を聞いたとき、どんな印象を持たれましたか?
大胡田弁護士:つかみどころがない印象ですね。そもそも、配慮に合理的なものと、合理的じゃないものがあるんだろうか……と考えます。
調べていくと、合理的配慮という名前になった経緯が分かってきました。合理的配慮は1960年代からアメリカの宗教差別の文脈でできた概念です。
アメリカは、いろんな宗教の人が同じ地域で暮らしているため、「各々信じている信仰を互いに尊重して、配慮しましょう」という考え方がありました。その後「障害者の権利」についての文脈にも「合理的配慮」という文言が加わりました。
遠藤P:そんな背景と歴史があったとは知らなかったですね。
合理的配慮という言葉の問題点がある!?

大胡田弁護士:“配慮”という言葉は、上から下に対する手助けのような感覚を持っています。障がいのない健常者が障がい者に恩恵的に「してあげる」というニュアンスがあるという批判があります。
イギリスでは「合理的な調整」という言葉を使っており、日本語としても「合理的な調整」とした方が、より平等で対等な関係を築く印象を持てるようになるのではないかと言われています。
遠藤P:なるほど。でも実際には、障がい者の方は自分で声を上げるのが難しいと聞きます。どうしてでしょうか?
大胡田弁護士:障がい者に限らず、日本人は自分のことを分かりやすく相手に伝えることが苦手な人が多い気がします。伝えることに苦労するくらいなら、自分は泣き寝入りをして我慢した方が楽だと思う気持ちは私も理解できます。
また、これまでに自分の必要なことを伝えても「わがまま言うな」「障害者だけ特別扱いできない」と言われてきた経験がある人は余計に言いにくくなってしまいますね。
遠藤P:今は発信手段にSNSを使えば、一瞬で全世界に伝えられるけど、炎上のリスクがありますね。でも、そこを法律によって、障害者差別解消法の改正や合理的配慮で守られる社会になっていけばいいですね。
大胡田弁護士:おっしゃる通りです。 これは法律上の権利と義務ですから、社会の側としてもやるのが当然かと思います。恩恵ではなく、優しさが大事です。
企業側の配慮「過重な負担のない範囲」とは、どのような基準なのか

遠藤P:最近、企業の方から『合理的配慮は過重な負担のない範囲で行うとされているけれど、実際どこまで対応すればいいのか』という質問をいただきまして、いかがでしょうか。
大胡田弁護士:結論から言いますと「明確な基準はない」です。障がい者と企業側で、対話を通じてはお互いで課題に向き合い調整をしていくのが、合理的配慮になります。
ですから、社長さんが一人で「これは過重な配慮なのか」と考えても答えは出なくて。
まず、障がい者側から「私に必要な配慮はこれです」と出してもらう、企業側はそれをできるかできないか判断します。例え、できなくても、別の手段を考えるなど一緒に検討する姿勢を持てるかどうかが大切です。
遠藤P:大きなスケールで考えても、求めることと違ってしまいますしね。
大胡田弁護士:そうなんです、企業側には対話ができる仕組みと気持ちがあればいいのではないかと思います。
法律的には、もっと障がい者側からの意思表示がないと、合理的な配慮が始まらないんですよね。 ですから、社会の理解を得るために、障がい者自身もどんな配慮が必要なのかっていうことを伝える意識しないと進まないのが現状です。
遠藤P:当事者と対話することで、理解し合えるとがありますからね。
大胡田弁護士:一人一人顔が違うように、障がいも違いますしね。典型的なケースは想定しておきつつ、たとえば店舗なら『お手伝いが必要な方は声をかけてください』と掲示したり、ウェブなら問い合わせ窓口を設けるなど方法がいくつかありますよね。
最近は昔よりも、世の中が障がいに対して理解を持とうとしています。無関心でいないことだけでも、我々にとってうれしいことです。
提供する側のハードルとは
遠藤P:一番はコストの問題です。どこまでやればいいのかという線引きが難しく、環境整備と具体的な申し入れへの対応の区別がつきにくいです。
例えば、貸しビルの場合、自社だけの判断でトイレを改修できないケースもあります。
大胡田弁護士:実はウェブアクセシビリティや駅のバリアフリーについては、法律で言うと「環境の整備」というジャンルで努力義務とされています。それを一人の障がい者から申し出た場合に、対応していく動きが合理的な配慮でして。
環境の整備と合理的配慮は、概念として別物なんです。障がいを持たない人が当たり前にできることを、できるようにする取り組みを作ることが肝になってきます。

遠藤P:配慮しなかった場合に、法的にトラブルになるケースはあるのでしょうか。
大胡田弁護士:あると思います。日本ではまだ裁判になったケースは聞かないですが、アメリカでは昔、プロのゴルフ選手が訴えを起こしました。その選手は、足が悪くて長距離を歩くことができないので、移動手段に電動カートを使わせて欲しいと訴えましたが大会本部から認められませんでした。
ですが裁判では、ゴルフの本質はあの地面に彫った小さな穴にボールを入れること。だから歩くことが重要でないのでルールを変えると判決が出ました。
昨年から合理的配慮が義務化されたことで、行政も厳しく指導しています。今後は、一人の申し出によって、法律的な義務に変わることが日本でもあるかもしれませんね。
大胡田さんが困っていること
遠藤P:大胡田さんは普段の生活で「ここは改善してもらいたい」と思う場面はありますか。
大胡田弁護士:最近は、ファミレスやコンビニの無人化が加速しています。目が不自由なら、誰かを呼べばいいと思われがちですが、合理的な配慮を求めたくても、求める相手がいない事態になるとお手上げです。
遠藤P:そうなると、安心して入れるお店しか選べないですね。
大胡田弁護士:そうなんです!でも、たまにはリーズナブルなお店にも入りたいです。
先日、無人でチェックインするホテルに泊まることになり、自分でタッチパネルを操作しなければドアが開かなくて……次のお客さんが来るまで待って、ホテルに連絡をするのを手伝ってもらいました。
遠藤P:そんな不便な思いをされていたとは!一見、便利な物でも、そうではないことがありますね。
大胡田弁護士:今後は新しい物を開発する人たちのためにも、自らが声を上げて気付いてもらうことが必要ですね。タッチパネルで操作などができないので、文章を自動的に短くまとめる“要約機能”を意識して導入すれば内容を理解できるかもしれません。

素晴らしい体験を発信してみよう
遠藤P:社会全体で合理的配慮を浸透させるために必要なことは何でしょうか?
大胡田弁護士:障がい者が「私はこんな素晴らしい配慮を受けたことがある!」と自身の体験を積極的に発信することです。
SNSを読んでいると、不満は多く見られますが、配慮を受けた感謝や喜びを伝えている人は少ないと感じます。
発信することで、事業者側も配慮の意義を理解できるようになりますし、学校教育や企業研修で法律の理解を深めることにつながります。
また、ドラマや映画、メディアで障がい者が自然に登場するようになることも重要だと思います。
実は過去に、私をモデルに目の見えない弁護士が活躍するドラマが放映されたことがありました。ですが、障がいのある人が自然に主役になる作品がもっと増えるといいと思います。
学校のクラスに一人障がいのある子がいるように、ストーリーに自然に登場してほしいですね。
遠藤P:我々メディアとしては、Co-Co Life☆女子部で、合理的配慮の良い事例やポジティブな話題を発信し、信頼できる関係性を築くことが大切だと思います。

大胡田弁護士:メディアが力を入れることは、とても頼もしいです。
私の例で話すと、大学時代に授業中に点字でノートを取ってたら、「音がうるさい」って苦情が出たそうで、教授に「 君は教室の端っこに移りなさい」って言われました。
そしたら学生の仲間が「 それはおかしい!全員が好きな席で授業を受ける権利がある!」とかばってくれました。 そこから大討論会みたいになって、最終的には自由に勉強しやすい席で授業を受けていいことになったんですね。 それをきっかけに私のクラスが一気に仲良くなったんですよ。
障がい者が社会の中に行くと摩擦があるかもしれないけれども、その摩擦を摩擦で終わらせずに何か対話につなげていけると、社会全体がよくなることがあります。
読者の方にはどうか周りの人を信じて、一歩踏み出してみてもらえたらと願います。

撮影:渡邉誠 取材・文:飯塚まりな
おおごだ法律事務所 (東京都港区白金台)
合理的配慮に関する記事はこちら